研究課題/領域番号 |
23360379
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
遠藤 琢磨 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00211780)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | デトネーション / タービン / 溶射 / 熱効率 / パージ / 高周波数 |
研究概要 |
ガスタービンエンジンの燃焼器としてパルスデトネーション(PD)燃焼器を活用するための研究については、燃焼器とタービンの間に設置されている衝撃圧力緩和用バッファ室を最適化した。このバッファ室は熱損失を増大させるエンジン要素の一つである。バッファ室形状を、必要なだけ衝撃波を弱めつつ表面積を最小化する目的で、円筒形状のバッファ室の長さLと直径dを様々に変化させて衝撃圧力減衰率を測定し、その結果を基にバッファ室形状を最適化した。結果として、バッファ室表面積を従来の30%にすることができた。また、圧縮機効率が既知のターボチャージャを導入することでタービンの等エントロピー効率およびエンジンの熱効率を精度良く評価できるようになり、エンジンの熱効率12.6%を達成した。ただし、運転時間がまだ不十分で熱的定常状態に達しておらず、さらに運転時間を伸ばす必要のあることがわかった。 溶射用熱源としてPD燃焼器を活用するための研究については、PD燃焼器におけるデトネーション発生位置を測定し、また、燃焼器への紛体導入位置を変化させて溶射実験を行い、デトネーション発生位置が点火位置から50~150mmであることを明らかにし、紛体導入位置をデトネーション発生直後の位置にするのが良いことを見出した。また、PD燃焼器を熱源とした溶射プロセスを明らかにするため、燃焼器を出た後の溶射紛体の温度と速度の変化の仕方を測定した。その結果、溶射紛体が燃焼器を出た後、約100mmの位置までは温度と速度がともに上昇し続けることを明らかにした。その結果を基に、基材を燃焼器出口から100mmの位置に設置してCoNiCrAlY合金の溶射実験を行い、厚さ以外はタービンブレード用皮膜のスペックを満たす皮膜を作ることができた。さらに、マスフローコントローラを導入してガス供給速度を安定化し、150Hzで15分間の燃焼器連続運転に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、パルスデトネーション(PD)技術をガスタービンエンジンの分野で実用化することを最終目的とし、ガスタービンエンジンの燃焼器としてPD 燃焼器を活用するため、およびタービン翼に保護皮膜を溶射するための熱源としてPD 燃焼器を活用するため、以下の基礎工学的な小課題を設定している。以下、具体的な小課題とその達成度をまとめる。 ガスタービンエンジンの燃焼器としてPD 燃焼器を活用するため、(1)装置の冷却機構を十分に整備し、10 分単位の連続運転を実現する。[100%](2)装置のガス供給部・燃焼器部・タービン入口部・タービン出口部の各々に複数個の温度センサー・圧力センサーを設置し、長時間連続運転時における各部の状態変化を明らかにする。[100%](3)装置各部の状態変化と熱効率の変化との関係を明らかにし、熱効率を向上させるために解決すべき課題を特定する。[80%](4)特定した課題の解決方法を推定し、実験によって検証する。[60%] タービン翼に保護皮膜を溶射するための熱源としてPD 燃焼器を活用するため、(1)加熱・加速された溶射材粉体の温度・速度を測定する装置を整備し、溶射条件による溶射材の温度・速度の変化および皮膜特性の変化を明らかにし、またそれらの相関を解明する。[60%](2)溶射条件の最適化を試み、実験によって検証する。[40%]
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今後の研究の推進方策 |
ガスタービンエンジンの燃焼器としてパルスデトネーション(PD)燃焼器を活用するための研究については、連続運転時間をさらに伸ばすため、長時間連続運転してもガスを安定に供給できるよう、ガスの供給系にマスフローコントローラを増設する。また、自着火を防止するため燃焼器内面の過度な温度上昇を抑えつつ、かつ熱損失を減らして冷却機構を最適化するため、燃焼器の前半部分に水冷機構を、後半部分に空冷機構を設ける。これらを行った上で、熱的定常状態が達成される程度の長時間運転を行い、現行システムにおける熱効率の最大値を明らかにし、さらなる熱効率上昇のための課題を明らかにし、その解決方法を検討する。 溶射用熱源としてPD燃焼器を活用するための研究については、溶射条件を変化させたときの溶射材状態の変化および皮膜特性の変化、並びにそれらの相関を調べる。溶射材としては、合金およびセラミックスを使用する。具体的には、現在新たに開発しつつある液滴パージ法をPD燃焼器に導入し、①パージ法の違いによる燃焼温度の違いを実験的に明らかにし、②高融点セラミックス溶射の可能性を明らかにする。さらに、他の溶射条件(溶射材粉体の加熱・加速距離,溶射材粉体の自由飛行距離,単位時間あたりの溶射材粉体供給量,溶射材粉体の平均粒径,基材の前処理方法)を変化させて、それらが溶射皮膜の(i)形成速度、(ii)気孔率、(iii)酸化物度、(iv)密着強さに与える影響を明らかにする。
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