本課題では、以下の2つの目的を設定した。 1.ガスタービンエンジンの燃焼器としてパルスデトネーション(PD)燃焼器を活用するため、PD燃焼器によるタービン駆動実験を長時間連続して行い、実用化のための課題を明らかにし、その解決法を見出す。 2.タービン翼に保護皮膜を溶射するための熱源としてPD燃焼器を活用するため、高周波数PD燃焼器を熱源とした溶射プロセスを明らかにし、溶射条件を最適化する方法を確立する。 前者に対しては、長時間連続してガスを安定供給できるよう、燃料ガス(水素)の供給系にマスフローコントローラを増設し、また、自着火を防止するため燃焼器内面の過度な温度上昇を抑えつつ、かつ熱損失を減らして冷却機構を最適化するため、燃焼器の前半部分に水冷機構を、後半部分に空冷機構を設けた。これらを行った上で10分間以上の連続運転を行い、出力を測定した結果、自らのタービン圧縮機で圧縮した空気を使った自立運転を行うためには空気使用量の低減が不可欠であることが明らかとなった。空気使用量低減のため、空気を用いないパージ法である液滴パージ法を導入し、パージ用空気を全く使わずに20分間の連続運転に成功した。また、現行のシステムでは、タービン入口温度を下げるために二次空気を導入しているが、水滴導入によりこの二次空気も使わないで連続運転できるようになれば、自らのタービン圧縮機で圧縮した空気だけを使った自立運転が可能であることが明らかとなった。 後者に対しては、新たに開発した液滴パージ法をPD燃焼器に導入し、そのことによってエチレンと純酸素による燃焼を実現し、以前のガスパージ法のときに比べて溶射粉体(合金)の温度が500度以上上昇し、3000℃程度の粉体温度を実現した。また、この方法により高融点セラミックスであるカルシア安定化ジルコニアの溶射を試み、効率は低いものの、溶射可能であることがわかった。
|