(1)RANS解析:非理想方状態方程式を導入した非定常3次元解析コードを用い,極低温噴流の解析を実施した.そして公表されている実験データと概ね一致する事が示され,本解析手法の妥当性を確認した.さらに,9つの化学種の質量保存を含む非定常3次元前処理解析コードの検証も引き続き行った.低速の酸素/水素剪断流の解析では,時間精度を有する剪断層の不安定現象の解析に成功した.そして,非定常な低速・多成分流体の解析には,非対角項を有する前処理行列の方が効率的であることも示された. (2)LES解析:これまでに作成してきた2次元LES流体解析コードを使用して,噴射温度を100Kに固定して遷臨界圧力条件下で解析を引き続き実施した.LESとしてはimplicit LESを用いた.状態方程式はSRK状態方程式である.また,遷臨界流れの保存形高次精度スキームの開発を行い,引き続き大規模解析に向けてコードのチューニングを実施した.さらに,超臨界極低温推進剤の乱流混合層において,エネルギー保存形と圧力発展方程式の双方の数値シミュレーション結果を比較することで,圧力発展方程式を用いることによる誤差の影響を評価した.乱流が十分発達した時刻におけるエネルギー誤差は,系にエネルギーを付加する方向に発生し,擬臨界温度近傍で大きくなることが判った.このエネルギー誤差の絶対値は,乱流によるエネルギー輸送の15-20%程度に達するが,エネルギー保存方程式と圧力発展方程式の間では,速度・密度剪断層の発達に有意な違いは見られなかった. (3)実験解析:前年度までに取得したデータの誤差および空間分解能の影響を評価するために,細径熱電対を用いた計測系を構築し誤差評価を行い,前年度の白金測温抵抗体のデータと比較した.その結果,流れ方向の空間分解能は十分有していたことを確認した.
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