研究課題/領域番号 |
23360385
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
岩下 英嗣 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60223393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地面効果 / 実海域 / 飛行性能 / 耐航性能 / 境界要素法 |
研究概要 |
本年度の研究は、全機模型のパワー付き風洞試験と、実海面上飛行時の耐空・耐航性能推定法の開発に関して各々下記のような内容で遂行した。(1) 全機模型のパワー付き風洞試験:計測精度を向上させるために、胴体、前翼、垂直尾翼を含んだ全機模型をNC切削で製作し、その全機空力試験と推進器を稼働させながらのパワー付き風洞試験を実施した。垂直尾翼に関しては、平成23年度の試験結果を受け、縦の静的安定性を向上させる目的でT字翼に変更している。両試験から、全機の圧力中心が推進器の稼働によってどのような影響を受けるかについて調べ、それを理論数値計算結果と比較し数値計算の妥当性を検証した。前翼取り付け角を9度にすることにより、縦の静的安定性を確保できることが分かった。また、2器の推進器同士にも空力干渉があり、その影響で推力が向上すること、および推進器と機体との干渉影響により揚力が4%向上することが分かった。以上の結果を踏まえ、全機の主要目を確定することができた。(2) 実海面上飛行時の耐空・耐航性能推定法の開発:地面効果翼機が平水面上や規則波面上を飛行する場合の耐空・耐航性能推定法については既に周波数領域のポテンシャル理論をベースとした推定法を確立している。今年度は、実海面上を飛行した場合の推定法として時間領域解法を新たに開発した。これにより時々刻々変化する翼後流面の発達の様子等を考慮しながら、斜め波上や不規則な波面上を飛行する場合の問題が解析できるようになり、実際に即した機体の耐空・耐航性能の推定が可能となった。翼単独の時間領域での解析を行い、翼後流面の幾何学的な変形が空力に及ぼす影響は小さいこと、また自由表面との干渉影響も無視できるオーダーであることが確認された。全機への適用を行い、翼間の干渉についても後流面の幾何学的な変形影響は小さいことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
概ね順調に進行していると自己評価している。今年度行った風洞試験において、計測値に与えるブロッケージ影響が大きいことが判明した。風洞管路を閉じた状態計測すると、模型に作用する揚力値で20%も高めの値が計測される。管路を開いてブロッケージ影響を排除して計測することにより、理論推定値と計測値が非常に良い合致を示すことが確認された。また、NC切削された精度の高い境界層板を用いて計測することで、板上の境界層もCFDでの予測値と極めて良い合致をすることが確認されている。これらは、当初予想していた成果とは別に付随的に得られた貴重な知見であり、今後の研究遂行に対してプラスの要因となる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの計画が概ね予定通りに進行していることから、大きな計画変更を行うことなく進めていく方針である。飛行シミュレーション検証用にRC模型を用いた飛行中のデータ収集を計画しているが、RC模型は手作りせざるを得ない物であるので(製作業者がないため)、その製作精度が不十分であれば、NC模型を用いた風洞試験て得られている空力性能が保証されない。そこで、RC模型自体を風洞試験に掛けて、NC模型で得られている結果と比較を行い、模型の製作精度の確認を行うという項目を計画に追加することにしている。以上を考慮した来年度の計画は以下の通りである。(1) 非定常空力解析:今年度開発した時間領域境界要素法を用いて、地面効果翼機が波浪海面上を飛行する際に機体に作用する非定常空力を求め、それが飛行安定性に及ぼす影響について調べる。(2) 飛行シュミレーションと検証:これまでに開発した風洞での空力計測法を用いて、全機の飛行シミュレーションで必要となる流体力微係数の計測を行う。色々な飛行高度に対して前翼に装備されたエレベーターの角度と機体トリム角度を変化させながら計測を行い、空力微係数のデータベースを構築する。最後に、得られた空力微係数および理論計算で得られた流体力推定法を用いて地面効果翼機の飛行シミュレーションを行い、RC模型の自由飛行試験で得られる結果との比較を行う。(3) 総括:3年間の本研究全体を総括し、得られた結果、今後の課題等を明示する。
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