本年度は、地面効果翼機の耐空・耐航性能理論推定法の推定精度改善と飛行シミュレーションにおける推進器影響の考慮の方法に関して研究を遂行した。 これまでに、地面効果翼に作用する定常・非定常空力を推定する方法として境界要素法をベースとした方法を構築している。風洞試験の結果との比較を通じて、抗力の推定精度がやや低いことが考察されたので2次元CFDを導入してその改善に取り組んだ。まず、2次元翼断面形に対して2次元CFDコードを適用し、色んなレイノルズ数および揚力係数に対して摩擦抗力を算出してデータベースを作成する。次に3次元翼の各断面の翼素に対する揚力係数を境界要素法で算出し、得られた揚力係数と翼素のレイノルズ数に対してデータベースから摩擦抗力を内挿的に求める。最後に得られた断面ごとの摩擦抗力を翼全体で積分して全体の摩擦抗力を得る。この手法により、翼に作用する抗力は風洞試験の結果と極めて良好な精度で合致するようになった。 時間領域境界要素法を用いた、翼後流のロールアップなど幾何学的な形状変化が空力に及ぼす影響推定についても精度の向上を図った。後流面上の流速計算の参照点として、計算上の特異性を有しない点を選択することで、これまでより長時間の後流シミュレーションが行えるようになり、一連の計算から、前翼の翼端渦により主翼後流がロールアップ影響を強く受けること、しかしながらその空力への影響は極めて小さいことが判明した。 色々な飛行高度に対して前翼に装備されたエレベーターの角度と機体トリム角度を変化させながら風洞試験を行い、空力データベースを構築した。また、巡航時の飛行シミュレーションに関連し、空力と推進器との干渉影響について考察し、空力干渉影響としては主翼後方の流速を10%程高く設定することで干渉を考慮したシミュレーションが行えることが分かった。
|