研究課題/領域番号 |
23360387
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉川 孝男 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50380572)
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研究分担者 |
前田 正広 九州大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70173713)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 超音波探傷 / 欠陥同定 / 数値シミュレーション / FEM / SPM / マイグレーション / ニューラルネットワーク / 斜角探傷 |
研究概要 |
本研究では、まず造船所の超音波探傷において最も広く適用されている斜角探傷法を対象に、検査対象物の表面で探触子を移動させて取得した超音波の時間波形を数学的に処理することによって、欠陥性状を可視化する技術を構築した。また、FEMを用いた数値計算により超音波(縦波および横波)の伝搬挙動を求め、これを可視化する技術を構築した。さらに、超音波の伝搬経路(探触子中の振動子、探触子と試験体の界面、欠陥表面、試験体裏面など)に点音源を配し、それらの音源間の超音波の伝搬挙動を拡散減衰や伝搬距離の差異による位相ずれ等を考慮した解析的な新しい伝搬シミュレーション手法(Superposing Method ;SPM)を新たに構築し、FEM解析の1/100の計算時間で超音波の伝搬挙動を求めることに成功した。これを適用して種々の位置、大きさ、傾きを持つ欠陥を想定して、欠陥からの反射波形を求め、これを教師データとして欠陥同体のためのニューラルネットワークを構築した。さらに、人口欠陥を持つ数種類の試験体を製作し、欠陥からの反射波を計測し、その結果を構築したニューラルネットワークに入力して欠陥同体を行い、欠陥の位置、大きさ、傾きが従来の熟練計測者の経験に基づく手法より高い精度で推定できることを示した。この成果を日本船舶海洋工学会に論文発表したが、この論文に対してH25年5月に開催される年次総会において、日本船舶海洋工学会賞(論文賞)が授与されることが決まっている。また、塗膜のある場合の影響をキャンセルする方法についても数値計算で効果を調べた。さらに試験による確認を実施中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超音波探傷における超音波の伝搬挙動を、数値シミュレーションを用いて可視化することができた。さらにFEM解析を用いたシミュレーションに代わる極めて効率的な新しい解析手法であるSMPを開発した。これを用いた計算した欠陥からの反射波形を教師データとしたニューラルネットワークを構築し、試験結果から欠陥の位置、寸法、角度を評価したところ、従来は評価できなかった探触子寸法より小さい欠陥の寸法を高精度に推定することができた。このほか塗膜を有する場合の評価手法についても有益な研究成果を得ている。なお、当初予定していたレーザー超音波の検討は、計画になかったSPM開発を行ったためにまだ十分には検討できていないが、25年度に研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
レーザ超音波探傷の可能性について検討を進める。これまでの調査では、対象を遠隔で加振する超音波については、比較的安価に実現でき、実用に供しうるとの感触である。受信側のレーザーについては、検知精度を必要な程度に高くすると非常に高価な装置になってしまい、造船所で使用するには実用的でない可能性が高いが、さらに調査を行う予定である。 閉じた欠陥の探傷方法の開発に関しては、まず数値計算で検討している手法の有用性を確認し、その後試験による検証を行うことを計画している。
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