研究課題
船舶などの構造物の安全性を確保するには、溶接部などに存在する欠陥を探傷し、有害なものについては補修し取り除く必要がある。しかしながら、従来の超音波探傷においては、その精度は検査技能者の経験・技量によるところが大きく、実際の評価結果には大きなばらつきが存在し、重大な欠陥を見逃す場合や、欠陥でないものを欠陥と判定して余分な補修施工を行う場合も多いのが現状である。そこで、本研究では検査技能者の経験・技量によらない客観的な欠陥の評価技術(欠陥の位置、大きな、形状の評価)の構築を目指している。前年度までは、製造時に生じた欠陥の探傷技術に注目して研究を行ったが、今年度は就航後の船舶において、初期欠陥から成長した疲労き裂を探傷する技術の構築を目指して研究を行った。就航後の船体構造に対して非破壊検査を行う場合には、鋼材の表裏面に塗膜がある状態での探傷が必要となるが、塗膜厚さによって非線形に欠陥からのエコー高さが変化することが問題となる。本研究ではこの原因が、塗膜内での超音波の多重反射と、塗膜と鋼材とに間で生じる超音波のモード変換の両方であることを明らかにした。さらに、垂直探傷においては、塗膜と同じ材質の非干渉板部材を塗膜と探触子の間に挿入することによって、塗膜内での多重反射の影響を除外できる可能性のあることを示した。また。斜角探傷では、多重反射とモード変換の両方の影響があるため、非干渉板部材設置だけでは塗膜厚さの影響を除外することは難しく、さらに探触子の発振周波数を高くすることで、干渉の影響を減じることができる可能性のあることを示した。さらに、閉じた欠陥の探傷を目指してkHオーダーの振動を与えた状態で、超音波探傷を行う手法を考案し、探傷試験を実施してその有用性について調査した。今後、この手法の実用化に向けた研究を継続して実施する予定である。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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非破壊検査
巻: Vol.61,No.9 ページ: 480-487
ISSN 0367-5866