研究概要 |
本年度は,主に疲労試験機を導入して,今までに使用していた別の大型疲労試験機で可能であった疲労き裂先端近傍のヒステリシスループを新小型疲労試験機で可能なように冶具を含めた荷重軸を高精度に調整することや,疲労き裂の伝播経路の直進性を確認することであった。その結果,新小型疲労試験機においても,試験片幅150mmのCT型試験片において疲労き裂長さ80mm(き裂全長120mm)まで,ほぼ直選するよう調整を完了し,確認試験を実施して大型疲労試験機以上の精度でヒステリシスループの計測が可能となったことが確認できた。このことで,来年度実施する疲労き裂伝播試験における疲労き裂の屈曲が,鋼材の結晶組織の影響のみとする試験システムを構築できた。 また,本研究の目的である伝播中の疲労き裂先端と鋼材の結晶組織の関係を明らかにするために,現有の動き解析マイクロスコープを用いて,エッチングした試験片表面における結晶組織と疲労ぎ裂の関係をマイクロスコープのズームレンズの最大倍率1,000倍で撮影を行った。その結果,ある程度の画像撮影は可能であったが,高倍率での撮影のため,PIV法での画像処理を行うとピントのずれによるノイズの影響が大きい部分があった。これは,荷重軸を合わせていても除荷時に試験片が面外にゆれていることが考えられ,PIV法による画像処理の精度を向上させるために改善する必要がある。 今回導入した小型疲労試験機に取り付ける油圧チャックは,次年度導入予定であるために,鋼板板厚方向に伝播させる片側切欠き付薄板試験片を用いた疲労き裂伝播試験については,本年度は実施していない。来年度実施予定の高倍率での伝播中の疲労き裂撮影に向けた,そのほかの実施可能な疲労き裂伝播試験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定でも油圧チャックの購入は第2年度に行うことにしていた。第1年度は,疲労試験機での疲労き裂伝播の直進性の確保や,き裂先端のヒステリシスループ計測のための調整を行うことが主目的であったことは完全に達成できた。また,既存の動き解析マイクロスコープの高倍率撮影の問題点も把握することができた。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度に,第1年度に導入した小型疲労試験機に油圧チャックを設置して,薄板試験片の疲労き裂伝播試験が実施可能なようにする。第1年度の予備試験において明らかになったピントのずれを修正して,動き解析マイクロスコープでの高倍率撮影画像の鮮明化を図る。このことによって,PIV法による画像処理のノイズ除去を図る。 また,疲労き裂伝播試験した鋼材を表面から研磨,エッチング,撮影を繰返し,疲労き裂伝播経路と結晶組織の関係を明らかにする予定である。
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