研究課題/領域番号 |
23360391
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
勝田 順一 長崎大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20161078)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 疲労き裂 / 伝播経路 / 鋼材 / 結晶組織 / パーライト / 3次元形状 |
研究概要 |
昨年度,本科研費で購入した疲労試験システムに,今年度,油圧チャック,及びデジタル動ひずみ測定器を購入し,装備して稼働確認試験を実施した。その結果,自作した計測プログラムを含めて,所定の計測が可能であることを確認した。また,疲労き裂先端近傍のヒステリシスループも高精度で計測できていることを確認した。 今回構築した疲労き裂伝播試験システムを用いて,同じスラブ材から圧延条件を変えることによって,結晶粒寸法や結晶形状を変化させた2種類の鋼材の疲労き裂伝播試験を行った。試験片は,片側貫通き裂が鋼材の板厚方向に伝播するように製作したものである。また,疲労き裂伝播経路と結晶組織の関係を明らかにするために,試験片表面は10%硝酸アルコールでエッチングした。伝播試験中は,試験片表面を動き解析マイクロスコープで撮影して,疲労き裂の伝播状況を撮影した。試験片の撮影する表面とは反対側表面には,5連ひずみゲージを貼付して疲労き裂先端の変形を記録した。疲労き裂伝播試験終了後,疲労き裂周辺を0.01㎜ずつ研磨し,エッチングし,表面を撮影した。得られた50枚の画像を合成して,パーライト組織の3次元形状と疲労き裂伝播経路の関係を明らかにした。 今年度の調査の結果,疲労き裂は,結晶粒寸法が大きい場合には,大きく,数少なく屈曲すること,結晶粒寸法が小さい場合には,小さく,数多く屈曲することが明らかとなった。また,軟らかいフェライト組織中を荷重直角方向に直線的に伝播し,前方に硬いパーライト組織がある場合には,それを避けるように伝播すること,フェライト組織中を伝播中に屈曲する場合には,内部にパーライト組織が存在すること,硬いパーライト組織を断ち切って伝播する場合には,内部でパーライト組織が細くなって1つの結晶粒の端部であったことが,今回明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で達成目標としていた,疲労き裂伝播経路と結晶組織の関係を明らかにするための疲労き裂伝播試験システム,及び疲労き裂の伝播経路を計測する技術を確立できた。さらに,疲労き裂伝播試験終了後に,疲労き裂伝播経路と結晶組織の形状を3次元画像として獲得するための方法を確立できた。 また,構築した試験,計測システムを用いて,疲労き裂が屈曲しながら伝播する場合のパーライト組織の影響について,明らかにできた。 最終年度には,確立できた試験,計測システムを用いて,鋼材の板幅方向へ伝播する疲労き裂伝播経路と結晶組織の関係を明らかにすること,数値解析モデルを作成して,屈曲伝播するき裂先端の力学的条件を明らかにすることを十分に行うことができる時間が確保できたことにより,本研究は,おおむね順調に進展しているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,一昨年度,昨年度で構築した疲労き裂伝播試験システムと,昨年度実施した疲労き裂伝播経路と結晶組織の関係を3次元的に明らかにするための調査方法を用いて,鋼材の板幅方向へ伝播する疲労き裂の伝播経路,及び他の鋼材での疲労き裂伝播経路について調査する。 また,硬い組織とやわらかい組織が分布する3次元数値解析モデルを作成し,き裂先端のひずみ分布と組織の関係について,3次元数値解析を行う。このことから,硬い組織とき裂船やんの位置関係を明らかにして,疲労き裂伝播試験結果との比較,考察を行う。 以上のことから,疲労き裂伝播寿命を向上させるために効果的な結晶組織の分布について考察する。
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