研究課題/領域番号 |
23360394
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研究機関 | 広島商船高等専門学校 |
研究代表者 |
井田 徹哉 広島商船高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (80344026)
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キーワード | バルク高温超伝導材料 / パルス着磁 / 超伝導磁石 / 舶用同期電動機 |
研究概要 |
次世代の舶用同期電動機や発電機の大幅な性能向上を目指して、波形制御パルス着磁法によって高温超電導バルク磁石が本来有している大きな総磁束と良好な捕捉磁場分布を充分に引き出すことを目的としたパルス着磁技術の開発を行った。平成23年度は次年度以降に実施する本格的な研究の実施に必要な環境整備と基本的な実験条件の確認作業を推進した。 現在量産が可能な酸化物系高温超電導バルク磁石は30K前後の極低温に冷却した場合に最も捕捉磁束密度が高くなると報告されており、舶用推進器への実用化に際してこの温度域を想定すべきである。一方、この温度域では高温超電導バルク磁石が発する電磁力が強く、遮蔽磁場も高いことから、この強磁場に耐えられる極低温実験環境の構築が必要となる。本研究課題では平成24年度以降に30K前後でのパルス着磁実験を予定しており、平成23年度は30K以下まで冷却が可能なGM冷凍機を導入すると共に、舶用同期電動機内部の着磁環境を再現可能な冷凍機内蔵型のパルス着磁装置の設計・製作を行った。また、波形制御パルス着磁電源を改良してパルスコイルへの出力電流を増強し、液体窒素温度域と比べて高い磁場に対応可能な環境を整えた。そのため、東京海洋大学で開発中の高温超電導同期電動機と同等の内部環境下で、パルス着磁装置は最大出力の25kJでパルスコイルを駆動可能となった。 平成23年度は77Kにおける波形制御パルス着磁実験を行った。高温超電導バルク磁石へ侵入した磁束を測定して発生磁場の制御を試みたところ、臨界磁場近傍において侵入磁束の振る舞いが著しく変化する様子が見られた。ゆえに、波形制御パルス着磁による捕捉磁場特性の向上を実現するために、バルク表面の適切な領域を選び発生磁場制御のための評価を行う必要性が明らかとなった。磁束の評価に有用と考えられる2次元磁場計測センサに関しては極低温下、パルス強磁場下で仕様に基づく動作を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
波形制御パルス着磁電源の改良は予定通りに進んだ。GM冷凍機の導入に手間取り、それに合わせたパルス着磁装置の製作完了時期が遅れ、着磁治具の設計・製作に入れなかった。2次元磁場計測センサについては、極限環境下での動作検証を完了することができたが、予備実験中に見られた雑音混入への対策などに手間取り、試作センサの完成に至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後は30K以上での温度制御下で波形制御パルス着磁を行うための実験装置を完成させる。また、2次元磁場計測センサの試作を完了させて、パルス着磁中の侵入磁束の評価を試みる。以上によって実験環境を整えた後に、波形制御パルス着磁実験を77K以下の温度域で行い、フィードバック制御のための適切な磁場計測領域の検討を進めて、捕捉磁場特性の向上を目指す。2次元磁場計測センサについては最大225点の同時計測を実現する予定であるが、雑音の混入等のために計測評価に支障をきたした場合には可能な範囲での計測に留めて実験を進める。また、77Kと比べて捕捉磁場が増加すると思われることから、必要に応じてパルス着磁電源の出力増強を行う。このような過程を経て、捕捉磁場特性の向上に必要なパルス着磁技術の開発を推進する。
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