研究課題/領域番号 |
23360399
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
坂口 清敏 東北大学, 環境科学研究科, 准教授 (50261590)
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研究分担者 |
松木 浩二 東北大学, 環境科学研究科, 名誉教授 (10108475)
木崎 彰久 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (60344686)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 地圧測定 / 地震 / 円錐孔底ひずみ法 / 東北地方太平洋沖地震 |
研究概要 |
釜石鉱山における原位置応力測定実験を行った。実験の目的は,1)開発した測定システムの性能評価,2)地圧データの収集,3)東北地方太平洋沖地震前後における浅所地殻応力場の変動の定量化である。1)については十分な実用性を持つことが確認できた。2)については,十分な測定精度を有した結果が得られた。3)については,以下にまとめる。 ①主応力に方向:最大主応力は地震前後ともに概略南北であり,大きな変化は無い。一方,中間主応力と最小主応力には地震前後において明瞭な違いがある。地震後は,中間主応力は東西にほぼ水平方向,最小主応力は鉛直方向であり,地震後に明瞭な逆断層型の応力場に転じ,約2年後もその傾向を維持している。 ②主応力の大きさ:地震前後で明瞭な違いが見られた。地震後1年では,全ての主応力値が地震前のそれの2倍~4倍程度に大きくなっていた。また,鉛直応力は該当する測定点の推定被り圧に比較して2.2倍~2.5倍程度と大きくなっていた。地震後約2年の結果では,最大主応力は地震前と比較して依然として大きいものの,1年後のそれとの比較では小さくなっていた。中間主応力,最小主応力は地震前と同程度であり,鉛直応力は推定被り圧とほぼ等しい値になっていた。鉛直応力が推定被り圧に比較して大きく測定されたのは,地震後に観測されている地殻の隆起の速度の影響と考えた。 地圧測定結果について,水平面内における最大水平応力SHmaxと最小水平応力Shminを求め,平均応力に対するせん断応力の比:um=(SHmax-Shmin)/(SHmax+Shmin)の経年変化としてまとめた結果,地震前のumは増加傾向にあり,2007年時点ではum=5.6程度となっていた。地震直前の値は不明であるが,増加していた可能性は否定できない。一方,地震1年後にはumの値は大幅に減少し,約2年後の測定結果では再び増加に転じていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題の目的は,1)高精度深部地圧測定方法の開発,2)地圧データの収集(測定含)・整理,3)3D JAPAN STRESS MAP(地圧のデータベース)の構築の3つに分けられる。現在までに,1)~3)の全てが順調に進展しており,3)については,東北地方太平洋沖地震発生を機に,原位置地圧計測の3年間実施を目標に設定したため,予定の性能を低下させることなく,できるだけ少ない経費で実現できるよう工夫をした。その結果,当初3年目の完成を目標としてきたが,本年度(2年目)までに,データベースはほぼ完成の域まで達することができた。また,原位置計測も順調に実施できており,重要かつ示唆に富んだ結果が得られている。したがって,本研究課題は当初の計画以上に順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,3D JAPAN STRESS MAPの構築を当初の目的としていたが,「現在までの達成度」でも述べたように,1年先行して実施することができている。そこで,今年度(最終年度)は,原位置地圧の実測データの収集・整理・検討を中心とした研究を実施する。とくに,釜石鉱山で実施してきた地圧計測は,東北地方太平洋沖地震後3年目にあたり,地震後の浅所地圧変動の定量化を進める上で重要な年となる。これは,地震後1年目および2年目の測定結果が,非常に示唆に富んだ結果であったことから,内外の研究者からもその後の結果に着目されているからだけでなく,今後の地震予知を含めた防災対策や地下利用(トンネルなどの地下構造物,廃棄物処分空洞など)のために,必要な情報をもたらす可能性を秘めているからでもある。すなわち,メガ級の地震前後の浅所応力場(およびその変動)を定量し,これをデータベース化する(データベースに組み込む)ことは,今後の地下開発にとって,その設計・施工・管理の高度情報化に貢献できるだけでなく,地震予知も含めた防災計画策定にも重要な示唆を与え得る。したがって,今後も継続的な研究を推し進めていく。
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