研究概要 |
現在,放射性廃棄物の地層処分や液化天然ガス(LPG)の地下備蓄などといった,大規模かつ長期的に地下環境・空間を活用する試みが進められている。その対象岩盤として,花崗岩などの結晶質岩(亀裂性岩盤)は重要な候補岩種である。このような地下環境・空間利用を安全に遂行するためには,地下岩盤中の亀裂が長期にわたって水理学的にどのように機能するのかを明らかにする必要がある。本研究は,これまで萌芽研究として進めてきた「透水性亀裂の寿命」に関する基礎研究の成果を発展させ,我が国の地下環境利用の対象岩種の1つである結晶質岩中の透水性亀裂の機能とその寿命について,地球科学的データと工学的解析手法を組み合わせた総合的評価手法を構築することを目的とするものである。 これまでの研究の結果から、結晶質岩中の透水性亀裂中の充填鉱物の組織と鉱物種を詳細に観察、分析することによって、透水性亀裂の発生~現在までの定性的なプロセスを理解することが可能であることが分かった。とくに、現在も透水性を示す亀裂には、炭酸塩鉱物が必ず沈殿、形成されており、透水性亀裂の判断指標として用いることが可能であることも確認できた。これらの炭酸塩鉱物は、基本的に自形をした結晶であり、透水性亀裂中の空間が未だ地下水の水みちとして機能していることを示すものである。 今後の予定としては、とくに炭酸塩鉱物に着目し、その成因と併せて透水性亀裂の寿命、年代尺度の導入を試みる予定である。
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