研究概要 |
高レベル放射性廃棄物等のエネルギー生成後の副産物を深地層下の岩盤内に隔離し,長期に渡りその性能を保証するためには,副産物隔離後の岩盤の水理学特性の経時変化を予測評価することが必要不可欠である.そこで本研究では,透水特性の経時変化に着目し,拘束圧及び温度を制御した単一の亀裂を有する花崗岩,砂岩および泥岩の透水試験を実施し,透水特性の経時変化を観察すると共に,その変化に起因するメカニズムの解明を試みた.実験条件は,拘束圧3.0,5.0,7.5,15.0MPaで,また温度条件は20および90℃で透水実験を行った.さらに,透過水については蒸留水,高pH水および不溶性のシリコーンオイルの3種類を採用した.蒸留水については,鉱物溶解を促進させるために使用し,高pH水は,人工バリアのセメント溶出を模擬した.また,シリコーンオイルについては,逆に鉱物溶解を起こさせない環境を模擬するために使用した.透水試験の結果,蒸留水を使用した場合,実験開始と共に透水性は一様に低下していくことが確認された.一方,高pH水を使用した実験では,20℃条件では,ほとんど透水性の変化が確認されなかったが,90℃条件では,蒸留水を用いた実験よりも透水性が低下する結果が得られた.また,鉱物分析及び微視構造観察の結果より,石英表面の溶解や,透過流体中のカルシウムとケイ素の溶出に起因するCSHの沈殿が確認された.さらに,物質濃度評価の結果より,25および90℃条件共に,中性条件と比較してより高いSi濃度が検出された.これは,高pH条件の透過流体が中性条件よりも岩石構成鉱物の石英や長石をより多く溶解させていることに起因している.その結果,90℃条件では透過率が大きく減少したと考えられる.
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