研究課題/領域番号 |
23360402
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
小池 克明 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (80205294)
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研究分担者 |
佐藤 晃 熊本大学, 自然科学研究科, 准教授 (40305008)
麻植 久史 熊本大学, 自然科学研究科, 助教 (70462843)
柏谷 公希 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40447074)
鶴田 忠彦 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (10421679)
松岡 稔幸 独立行政法人日本原子力研究開発機構, その他部局等, 研究員 (40421672)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 応用地質 / 透水係数 / 鉱物組成 / 元素濃度 / 亀裂分布 / 地球統計学 / 空間モデリング / 土岐花崗岩 |
研究概要 |
土岐花崗岩を対象とし,岩石試料を用いた計測と分析,および化学平衡・物質溶脱に関する検討を行い,下記の主な成果を得た。 ①健岩部・亀裂帯・断層破砕帯を代表する多数の地点で得られた透水係数データとGEOFRACによるシミュレーション亀裂とを組み合わせ,これに逐次ガウスシミュレーション法を適用することで,cmからkmオーダでの透水係数分布をマルチスケールで推定できるようになった。この分布を用いて地下水流動シミュレーションを行ったところ,概ね長さ2 km以上の亀裂面が主要な地下水経路を形成し,広域的な流動形態を支配していると解釈できた。 ②長さ1000 mの深層ボーリングコアを対象とし,深度方向の透水性変化と異方性の把握のために25 m間隔で16方位の浸透率を計測した。その結果,浸透率は変質帯や断層帯で急増するとともに,浸透率の異方性は付近に存在する断層の走向と調和的であることがわかった。次に岩石薄片の画像処理によって長さ0.1~20 mmの微小亀裂を抽出したところ,開口幅を有する微小亀裂の卓越方向と浸透率が極大となる方向とが概ね対応した。 ③変質・破砕程度が異なる5本の水平ボーリングコアを試料として,XRDによる鉱物同定と蛍光X線による化学組成分析を行った。その結果,イライト,緑泥石などの粘土鉱物の生成が割れ目帯や断層帯において顕著であり,全試料で方解石の存在が確認できた。また,方解石の主成分であるカルシウム(Ca)濃度と浸透率とに概ね正の相関関係が見出された。斜長石のイライト化の過程でCaが沈殿するので,Ca濃度が高い変質帯や割れ目帯は熱水変質が顕著に進んだことが示唆される。すなわち,このような領域は高透水性であり,熱水の流動経路として機能したと考えられる。よって,風化に伴ってCaが選択的に移行・拡散し,この濃度分布は岩石の風化継続時間を見積もるための良い指標となることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的を達成するために,(1)断層や亀裂を含む地質体の透水係数を密な間隔で測定し,透水係数の空間的な不均質構造を詳細に明らかにする,(2)透水係数の測点で構成鉱物を同定する,(3)風化や変質に関連した主要元素の分布を各測点で明らかにする,(4)岩石試料スケールでの構造や岩石初生の元素組成を求め,フィールドスケールでの元素分布に関しての物理的・化学的なモデルを構築する,という研究項目を設定した。2年目である昨年度は(1)から(3)の項目について詳細に検討することができ,透水性に関する物理的・化学的データを蓄積できた。また,(4)についても基礎的な知見が得られたので,進捗状況は概ね順調と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度と同様の実施体制と協力関係の下で研究を推進させる。主要亀裂と岩石透水性の3次元分布に関してはモデリング手法をほぼ確立できたが,データ位置と観測方位のバイアスの問題を考慮できる手法への改良が必要である。また,透水係数の時間的変化や風化継続時間の推定法に関しては検討がまだ十分でないので,ボーリングコアを用いての室内実験,鉱物・化学分析,および化学平衡・物質溶脱に関する理論的検討を継続する。これらにより,透水係数の時間変化パターンを解明するとともに,超長期にわたる鉱物変化,透水性変化,地下水流れのパターン変化を予測できるシミュレーション法を本年度(最終年度)で開発する。
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