研究課題/領域番号 |
23360405
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
馬場 由成 宮崎大学, 工学部, 教授 (20039291)
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研究分担者 |
大榮 薫 宮崎大学, 工学部, 助教 (00315350)
岩熊 美奈子 都城工業高等専門学校, 物質化学系, 准教授 (00342593)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 廃棄物再資源化 / 環境材料 / 反応・分離化学 / 分子認識 / 環境技術 |
研究概要 |
【I】ゾル-ゲル法によるシリカ/キトサンハイブリッド吸着素子の合成とレアメタル分離特性 (i) 貫通孔を有する多孔質球状体のシリカ/バイオマスハイブリッド吸着材素子の開発 ; エマルション法により多孔質球状体のキトサン/シリカハイブリッド吸着材を合成し、キレート配位子としてピリジン、グアニジンやカルボン酸、ホスフィン酸を導入した新規な吸着材を開発した。それぞれの吸着材は、貴金属あるいはInやGaに対して高い吸着選択性を示した。これらの結果に基づき、カラム法によりホスフィン酸型ハイブリッド吸着材用いてIn, Znの混合溶液からInの高速で高選択的な分離を実証することができた。 (ii) 能動輸送を発現するシリカ/キトサンハイブリッド固体分離膜の開発 ; カルボン酸型キトサンを合成し、トリアルコキシドシラン(TEOS)用いて、シリカ/キトサン固体膜の作成を試みたが、成膜はできるものの酸性溶液に対する耐久性が十分ではなかった。現在は、キトサンのアミノ基とエポキシ基をもったアルコキシ誘導体との反応によりハイブリッド化し、その後カルボン酸を導入して成膜する方法を検討している。 【II】実浸出液からの貴金属回収のためのパーフュージョンクロマトグラフィーの工学的評価 貴金属の中でも特にその吸着速度が遅いPt(IV))およびPd(II)の選択的な吸着回収の実用化試験に、まずグアニジン型キトサン誘導体を用いてバッチ法により検討した。本吸着材は大量のベースメタル(Fe3+, Cu2+, Ni2+, Co2+, Sb3+)を含んだ模擬塩酸溶液からの白金(IV)およびパラジウム(II) の高選択的回収を実現することができた。さらにカラム法では、キトサン誘導体の貫通孔の効果により、超高速(空間速度100 h-1以上;普通は0.1~数 h-1)で金(III)の回収が実現できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ゾル・ゲル法によるキトサン/シリカのハイブリッド化を行い、しかも多孔性で真球状体の吸着材の合成に成功した。バイブリッド膜については、その強度をクリアする必要があるが、均一系の反応を利用することによって、シリカとキトサン相溶性を改善することによって、解決できそうである。さらに吸着材に多くの種類のキレート配位子を容易に導入できる簡易型の合成方法を確立でき、貴金属/ベースメタル、In, Ga/Al, Znの分離、Cd/Zn等の分離を達成できた。最初の目的通り、ハイブリッド化によって高い吸着容量・速い吸着速度を保持しながら高い強度を発現し、しかも貫通孔をもった超多孔質吸着材を開発することができた。これらをバーフュージョンクロマトグラフィー(一般的なクロマトの空間速度:0.1~1h-1)へ応用し、200-500 h-1の空間速度(濃縮度:360倍)が実現できたことは期待以上の成果・進展であろう。
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今後の研究の推進方策 |
ゾル・ゲル法によるキトサンやカゼインなどのような生体高分子・タンパク質とシリカ無機材料とのハイブリッド材料は吸着材の基体としてだけではなく、生体適合性材料としても期待される。しかも球状体などのような形状制御も可能であることが見出せたことは、新たな機能性を持った材料開発の一つの合成指針になると確信している。本研究プロジェクトでは、資源のない日本でのレアメタルの安定供給に向けて、廃電子機器からの貴金属やレアメタルの分離・回収材としての吸着材の開発を目的としており、本研究プロジェクトで最初に提案していた申請書通りの方向性で今後も研究の展開を図っていく予定である。
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