研究概要 |
N-n-ヘキシル-ビス(N-メチル-N-n-オクチル-エチルアミド)アミン(BisAA)抽出系及びトリ-n-オクチルアミン(TOA)-N,N’-ジメチル-N,N’-ジ-n-オクチル-チオジグリコールアミド(TDGA)協同抽出系における、塩酸溶液からのルテニウム及びロジウムの抽出挙動の比較を行った。いずれの抽出系も塩酸濃度5 M未満では、Rh(III)がRu(III)よりも高い抽出率を示すが、5 M以上ではRh(III)抽出率の大幅な減少によりRu(III)の抽出率が上回った。これは、Ru(III)クロロ錯体における塩化物イオンの方が同様のRh(III)錯体のそれに比べて、抽出剤分子等と交換し易いことを反映していると考えられる。 また、米国オークリッジ国立研究所(ORNL)に設置されている中性子小角散乱装置(EQ-SANS)を用いて、(1)有機配位子BisAA-オクタノール混合溶液、 (2)BisAAがオクタノール中で塩酸と相互作用した溶液及び(3)BisAAがロジウム及び白金のクロロアニオンを抽出したオクタノール溶液について測定を行った。それぞれの測定データを定量的に分析し比較することで、白金族クロロアニオンの抽出溶液についてその微視的構造を検討したところ、白金族イオンの内圏ではオクタへドラル型の白金族クロロアニオン錯体が形成され、その外側(外圏)においてBisAAと白金族クロロアニオン錯体とが相互作用して会合体をつくることが示唆された。得られた小角散乱プロファイルを定量的に解析したところ、外圏では約2分子のBisAAが楕円状のシェル層を形成しており、ナノサイズ(長軸:3 nm、短軸:0.6 nm)の粒子が溶液中に一様に分散していると推測される。
|