研究課題/領域番号 |
23360409
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
永島 芳彦 九州大学, 応用力学研究所, 准教授 (90390632)
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研究分担者 |
高瀬 雄一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (70292828)
江尻 晶 東京大学, 新領域創成科学研究科, 准教授 (30249966)
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キーワード | トカマク / 非線形エネルギー移送 / バイスペクトル / 強磁場側プローブ / ロゴスキープローブ / 空間非対称性 |
研究概要 |
本研究は、トカマクプラズマの最外殻磁気面近傍(プラズマ内側)を対象に、大域的輸送に大きく寄与すると考えられる乱流揺動を広範な領域で実測し、乱流揺動間の線形相関・非線形相互作用を分析して、マルチスケール乱流の線形・非線形・非局所エネルギー移送について磁気面上での空間非対称性の実体解明を目的とする。平成23年度は、初頭に所属に異動があった(東大から九大へ)ことや予算の配分が流動的であったことなどにより、従来予定していた研究計画を変更した。具体的には、強磁場側プローブの設置を延期し、弱磁場側プローブによる研究、特に既存プローブによる基礎データ取得や弱磁場側のプローブ設計を先行して実施した。まず、再現性のあるTST-2プラズマ放電を対象に、既存のプローブを用いて弱磁場側のスキャンを丹念に行った。そのデータを詳細に分析して、TST-2プラズマの周辺乱流の基礎データを得た。データ分析の結果、10kHz程度のコヒーレントナ周波数を持つ磁気流体不安定性による揺らぎと、70kHz程度の周波数を中心にスペクトルのバンド幅が広い乱流揺動が観測され、空間点によっては両者間の非線形結合が観測され、両者の間に何らかの非線形エネルギー流の存在を示唆する結果を得た。その結果を電気学会の論文誌に投稿した。平成23年度の実験で既に膨大な実験データが得られたことから、平成24年度に導入予定であったデータ分析用PCを前倒しで導入し、高スペックのCPU・メモリにより計算時間の短縮に成功した。一方、プラズマ周辺部の電流分布や電流の乱流揺動による輸送を計測するために、最終年度に弱磁場側に設置予定であったロゴスキープローブの設計を前倒しで開始した。微小なロゴスキープローブによって電流分布と電流の揺動による拡散の同時観測を目指すため、ロゴスキープローブのサイズや必要なアンプのゲイン、静電・電磁シールド効果などの基礎実験を実施し、設計方針の大枠が固まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
既存プローブを用いた実験によって、1:TST-2においてターゲットとするオーミック放電を得、2:周辺乱流の基礎データを得ることに成功し、3:既存プローブの改良に向けたノウハウを蓄積することが出来た。基礎データの分析によって非線形結合の実測結果を得られた。また、データ解析PCの新規導入によって、特にメモリの増大の効果でデータ分析の計算速度が大幅に向上した。さらに、電流分布や電流拡散の情報を得るためのロゴスキープローブの開発を行い、多くの基礎実験を通して設計が固まりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
まず、東京大学のTST-2装置を対象に、非線形エネルギー流の実測可能なように既存プローブを改造する。平成23年度の実験では、10kHz程度の周波数を持つ磁気流体不安定性による揺らぎと、70kHz程度の周波数を中心にスペクトルのバンド幅が広い乱流揺動が観測され、空間点によっては両者間の非線形結合が実測されている。その結果は、両者の間に何らかの非線形エネルギー流の存在を示唆している。改造プローブの実測データを密度連続式や渦度輸送方程式に当てはめ、非線形エネルギー流を実測する。次に、ロゴスキープローブの整備を進める。昨年度までに設計の大枠が決定し、本年度はケーブルドライブやロゴスキー本体の寸法とS/N比の間のトレードオフなどの細部を詰め、製作に取り掛かる予定である。また、強磁場側プローブの設計作業を進める。TST-2装置では、現在低域混成波を用いた電流駆動実験が進捗し、それを考慮して強磁場側プローブの設計を進める必要がある。研究計画最終年度の初頭に強磁場側プローブ設置できるよう、研究分担者と協議を重ねる予定である。一方、九州大学に異動したことから、並行して九州大学でも研究を遂行する。非線形エネルギー流の空間非対称性の検定のため、直線プラズマ装置PANTAにエネルギー流測定用の空間分解能を向上させたプローブアレイを設置する。空間非対称なバイアス電圧・電流を印加することで、渦の傾斜効果による乱流運動量束の変動度合いに空間非対称性が発生することが期待される(あるいは非対称性が発生しない場合もあり得る)。バイアス無の場合や、局所的なバイアスを印加することによって、様々な空間点に渦の傾斜効果や非線形エネルギー流が分布・伝搬する様子を実測する。
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