研究課題/領域番号 |
23360410
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小川 雄一 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (90144170)
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研究分担者 |
森川 惇二 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (70192375)
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キーワード | プラズマ・核融合学 / 炉心プラズマ / 高周波加熱 / 内部導体装置 |
研究概要 |
高密度プラズマの加熱方式として電子バーンシュタイン波(EBW)が世界的に注目されている。大型核融合プラズマ実験装置では、EBWによると予想されるプラズマの加熱が観測されている。またEBWからの逆プロセスとして励起される電子サイクロトロン周波数帯の電磁波をプラズマ表面で測定することにより、EBWの励起を間接的に測定している。しかし、プラズマ中に励起されたEBWを直接測定してはいない。 一方、小型の内部導体装置Mini-RTでは、プラズマ中に高周波測定用のアンテナを挿入することにより、EBWを直接測定している。特に、EBWの静電波成分だけではなく、外部アンテナから入射された電磁波成分の測定や、極短パルス電磁波入射による群速度の測定を通して、EBWの励起メカニズムを同定し、理論との比較を行っている。 なおトーラス系プラズマでのEBWの励起の方法として、以下の3通りが挙げられる。 (1)弱磁場からのXモード入射で、カットオフ領域を超えて強磁場サイドのXモードを介してのEBWへのモード変換(FX-SX-Bと呼称) (2)弱磁場からのOモードの斜め入射を利用したEBWへのモード変換(O-SX-Bと呼称) (3)強磁場からのXモード入射によるEBWへのモード変換(SX-Bと呼称) 内部導体装置Mini-RTでは、「(1)FX-SX-B」の方式に関してEBWの研究を行ってきた。一方、球状トカマクやヘリカルプラズマでは、主に「(2)O-SX-B」の方式でのEBWの励起を考えている。またより効率良くEBWを励起するには「(3)SX-B」の方式も有効である。 今年度の研究では、Mini-RTで研究・開発してきたEBWの直接測定の手法のうち、(2)と(3)を用いたEBWの励磁実験を開始した。特にO-SX-B方式では、磁力線に対する電磁波の入射角に最適値がある。実験でも、入射角を変化させながらEBWの測定を行ったところ、EBWの短波長波動が検出される角度が存在し、定性的にO-SX-B方式でのEBW変換を観測できた。また光線追跡コードも開発しており、理論予測と実験結果の比較を行っている.このような内部導体トーラス装置での電子バーンシュタイン波に関する実験的研究および理論・解析との比較は、電子バーンシュタイン波のモード変換に関する基礎研究としての意義は大きく、ヘリカルやトカマクなどの他のトーラス装置への適用に関して指針を与えるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、3つの方法によるトーラス系での電子バーンシュタイン波(EBW)の励起・伝搬・加熱特性を総合的に理解することを目指している。我々はすでにFX-SX-B方式でのEBWの励起・伝搬特性を解明した。本年度は、他の2つの方式である、O-SX-B方式およびFX-B方式にチャレンジしている。特に、内部導体装置のみならず球状トカマクやヘリカルなどのトーラス装置でも高い関心が持たれているO-SX-B方式では、磁力線に対する電磁波の入射角に強く依存することが指摘されている。そこで我々は、真空容器内で可変の入射アンテナを用いて、プラズマへの入射角を変化させ、EBWの励起・伝搬特性を調べた。その結果、EBW励起に最適な伝搬角度が存在することが判った。また光線追跡コードを開発し、理論的にEBWの伝搬特性を調べると共に、実験との比較も開始した。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度以降は、「多様な磁場強度・磁場配位・密度勾配での電子バーンシュタイン波の研究」を掲げて、研究を進める。特にEBWの3つの励起方法のうち、O-SX-B方式とSX-B方式での実験研究に力点を置く。また光線追跡コードや波動伝搬コードの開発を推し進め、理論と実験との定量的な比較に努める。一方、EBWは電子サイクロトロン周波数の高調波領域で広く存在するので、磁場強度を変化させて実験するのも有意義である。ただしそのためには、Mini-RT装置の磁場を増力する必要がある。 Mini-RTではビスマス系のBi-2223高温超伝導線材を使用したが、イットリウム系のYBCOは強磁場特性に優れている。ここでは、最近その開発が著しいYBCO線材を用いてコイル起磁力の増力を図る。なおYBcO線材を用いたコイル化技術、永久電流運転などは、未だあまり経験がなく、これ自体でも非常にチャレンジングが技術開発であるここでは、今までの実績を元に、YBCO線材で磁気浮上コイルを製作し、強磁場下での電子バーンシュタイン波の効率よいモード変換を達成させる。
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