研究課題
本研究では、(1) 温度勾配不安定性(ITGモード)を実験室プラズマ中に励起し、密度揺動、電位揺動に加え温度揺動を計測する、(2) 温度勾配不安定性が駆動する磁場を横切る粒子束と熱流束の観測、zonal flowやstreamerなどの他の揺動構造との非線形競合過程の同定により、温度勾配不安定性の輸送への影響を明らかにする事を目的とする。本研究の重要な要素は揺動の励起、計測、揺動駆動輸送の評価である。平成25年度は九州大学直線乱流プラズマ実験装置PANTAを用いて、(1)ITGモードの線形シミュレーションを行い、PANTAにおいてイオン温度勾配が小さくても有限ラーマ半径効果がによりITGが線形不安定になる事を明らかにし、同時に実験条件を策定した。ITGモードが励起されると予測される条件で実験を行いドリフト波とは異なりイオン反磁性方向に伝搬する揺動の計測に成功した。温度揺動計測に関しては、(2) conditional sampling法を改良し、浮遊電位揺動の位相に対して温度揺動を抽出する手法の開発に成功した。これにより電位揺動と温度揺動との位相差を評価する事が可能になり、伝導的熱輸送評価の準備が整った。また、プラズマに擾乱を与えずにイオン温度を精密に測定するため、(3)レーザー誘起蛍光法によるイオン温度の計測の開発を進めた。誘起蛍光計測の信号ー雑音比を向上するため、複数の光検出器の信号を足し合わせるよう光学系の改良を行った。今後(1)で観測された揺動のに関してイオン温度揺動を求め、同定を進める。また、(4)エンドプレートをバイアスし、電場生成によるstreamerやzonal flowの制御を試みている。正バイアスにてstreamerは抑制される事が明らかになり、今後zonal flowの励起が期待される。来年度は(1)-(4)の成果を統合し、本研究の目的を達成する。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、(1) 温度勾配不安定性(ITGモード)を実験室プラズマ中に励起し、密度揺動、電位揺動に加え温度揺動を計測する、(2) 温度勾配不安定性が駆動する磁場を横切る粒子束と熱流束の観測、zonal flowやstreamerなどの他の揺動構造との非線形競合過程の同定により、温度勾配不安定性の輸送への影響を明らかにする事を目的とする。目的(1)の鍵を握るのはイオン温度勾配不安定性(ITGモード)の励起である。この不安定性の励起のためには大きなイオン温度勾配の形成が必要と考えられてきた。直線プラズマ実験装置PANTAでは強い密度分布が形成されているがイオン及び電子の温度分布は平坦である。このためイオン温度勾配を大きくするため、リミターによりプラズマの周辺温度を下げる、プラズマに挿入した電極をバイアスしイオンを加速する、等の方策を考慮していたが、イオンラーマ半径効果により小さなイオン温度勾配でもITGモードの励起が可能な事が数値シミュレーションにより示され、また実験ではITGモードの可能性がある揺動が観測されている。この揺動の同定のために必要な温度揺動計測法についてはイオンセンシティブプローブ用いた手法の開発は完了している。また、非接触高精度のレーザー誘起蛍光法の準備も進んでいる。このことから本研究の目的(1) の達成が期待できる。一方目的(2)の達成のためにはITGモードとstreamerやzonal flowの共存状態の実現が鍵となり、streamerやzonal flowの制御が重要となる。これまでエンドプレートバイアスによりstreamerに影響を与えられる事が分かっているため、今後の研究にてITGモード励起条件でのstreamerやzonal flowの励起が期待できる。以上より、研究は順調に進展していると言える。
本研究の要素である(1)ITGモードの励起、(2) イオン温度揺動の計測、(3)streamerとzonal flowの制御、に関し、(1)については引き続き既存の条件を中心に実験を進める。スペクトルの統計精度を高めるため再現性の良い放電を多数繰り返しアンサンブル数を大きくする。(2)に関しては位相同期型conditional averaging法を用いてイオン温度揺動振幅と電位揺動との位相差を同時計測し、(1)にて観測される揺動がITGである事を同定する。またITGモードが駆動する熱フラックスが評価可能となるのでこれを求める。プローブによる温度計測の絶対値の検証をレーザー誘起蛍光法を用いて行う。(3)に関してはエンドプレートではなく、装置軸方向の中間地点に電極を設置し、電極形状も分割型にし、より効率的な電場生成を目指す。最終的には(1)-(3)を統合し、ITGモード、及びITGにより駆動される輸送フラックスとstreamer, zonal flowとの間の相互作用を観測する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (13件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)
Plasma and Fusion Research
巻: 9 ページ: 1201016 1-2
10.1585/pfr.9.1201016
巻: 8 ページ: 1202172 1-2
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巻: 8 ページ: 1202171 1-2
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10.1088/0741-3335/55/11/115009
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