研究課題/領域番号 |
23360415
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研究機関 | 核融合科学研究所 |
研究代表者 |
須藤 滋 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 教授 (50142302)
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研究分担者 |
田村 直樹 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80390631)
尾崎 哲 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 准教授 (50183033)
鈴木 千尋 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (30321615)
武藤 貞嗣 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (40260054)
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キーワード | 計測用トレーサー / 計測ペレット / 不純物輸送 / プラズマ制御 |
研究概要 |
ポリスチレン球の内側にトレーサーを封入したトレーサー内蔵固体ペレット(THSPEL)により、不純物輸送、熱輸送、高エネルギー粒子や分光の研究など多岐にわたり展開している。特に、当該年度はバナジウム、マンガン及びコバルトの3種を同時にトレーサーとして内蔵するTESPELの入射実験を実施した。これにより、壁材であるステンレス鋼に由来するプラズマ中にもともと含まれる鉄やクロムとの比較を行うことができた。鉄の原子番号より1大きいものがコバルトであり、1小さいものがマンガンであるので、それらトレーサーと鉄との振舞いの違いを比較することにより、不純物の空間的な輸送特性を調べることができる。原子番号でバナジウムとマンガンの間に位置するのがクロムである。実験ではそれぞれの粒子の特性X線のKアルファ線や真空紫外域のライン光(主としてLi様)強度の時間変化を50msの時間分解能で観測した。その結果、密度が高い条件ではトレーサー粒子はプラズマ中心部にほとんど減衰せずに閉じこもる一方、壁由来の不純物はプラズマ中心部に侵入しないことが観測された。不純物が最初にデポジットした位置で不純物の振舞いが極端に異なることが初めて観測された。また、密度が5×10^<19>M^<-3>以下では壁由来の不純物もプラズマ中心部に蓄積することも観測されているが、トレーサー粒子数が既知であることを利用して、発光強度の比較から壁由来の不純物量の定量的評価も行うことができた。このようにマルチ・トレーサー手法のコンセプトが実証できたことを受け、その成果をまとめて学術誌に投稿した結果、現時点で掲載決定の連絡を受けている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
バナジウム、マンガン及びコバルトの3種を同時にトレーサーとして内蔵するTESPELの入射実験によって、プラズマ密度の違いにより不純物の振舞いが大きく変化することを見出した。さらに、プラズマ中にもともと含まれる鉄などの不純物との対比により予想以上の新しい知見を得ることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
トリプルトレーサーTESPELの有用性が明確に示されたことに基づき、この手法を用いて、大型ヘリカルプラズマでの不純物の振舞いを引き続き観測する。トレーサーとプラズマ中にもともと含まれる鉄などの不純物との対比を行いつつ、トレーサーのデポジション位置やプラズマ密度などのパラメータの依存性を調べる。これらにより不純物の輸送などの理解を深める研究を進める。
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