研究課題/領域番号 |
23360428
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
日野 正裕 京都大学, 原子炉実験所, 准教授 (70314292)
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研究分担者 |
川端 祐司 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (00224840)
杉山 正明 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (10253395)
北口 雅暁 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (90397571)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 中性子光学 / スーパーミラー / 集光 / スピン干渉 |
研究概要 |
J-PARC等の大強度中性子源や中性子光学の発展による実効中性子源強度の増加により、微少試料測定の可能性も高まっており、集光ミラー開発も活発になってきた。しかしトロイダルミラーのような2次元集光は最近の表面加工技術の進展をもってしても容易ではなく、また製膜も難しく大面積化は大変困難である。本研究では、最近申請者が発明した中性子スーパーミラーシートの応用等により、安価で量産可能な2次元中性子集光ミラーデバイスの製作法に道を拓き、その適用範囲を評価する。さらに、大型中性子源における既存の分光法の高度化だけでなく、中小型中性子源の利用効率の大幅な向上、新しい分光法の開拓に貢献し、低速中性子利用のすそ野を大きく広げる一助となることを目指す。 京大炉のイオンビームスパッタ装置では世界最高レベルの中性子スーパーミラーの製作が可能としていたが、その製膜可能エリアはφ200mm未満であった。しかし、製膜手法の改良により、m=4程度までのは大面積(φ450mm)でも均一でかつ安定的にスーパーミラーの製作を可能とした。またより大面積で膜厚の均一化のテストと応用をかねて、京大炉の小角散乱装置の新規モノクロメーターやBL05(NOP)の超冷中性子発生ドップラーシフターの入射ミラーの供給など、大型中性子源における既存の分光法の高度化だけでなく、中小型中性子源の利用効率の向上にも貢献している。 曲面ミラーの評価は申請者が装置責任者をしているJRR-3のMINEビームラインで行う予定であったが、2012年度のJRR-3の稼働は厳しいことが見込まれた。そこで、集光ミラー評価とさらにそれを利用した新分光法開拓を目指して、世界最強の研究用原子炉であるILL(フランス・グルノーブル)のVCNポートで分光器を組み上げ実験を開始している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
京大炉のイオンビームスパッタ装置の製膜可能エリアを真空槽やイオンガンのサイズの変更無しに4倍以上に大きくしたことは、当初計画には無い成果である。これは単に4倍に量産出来て、コストが下がるだけでなく、大型の曲面基板への製膜が可能となることも示している。そして大面積製膜テストをかねて、京大炉の小角散乱装置の新規モノクロメーターやBL05(NOP)の超冷中性子発生ドップラーシフターの入射ミラーの供給等、大型から中小型中性子源の利用効率の向上に既にいくらかの貢献はしている。 原子力機構JRR-3の長期停止により、当初予定していたMINEポートによる長波長中性子を用いた実験が難しい。そこで、京大炉やJ-PARCのBL16(SOFIA)での実験のみならず、ビームタイムを確保しかつ新しい分光法開拓を目指して、世界最強の研究用原子炉であるILL(フランス・グルノーブル)のVCNポートにMIEZE分光器まで組み上げ実験を開始、現在までに、TOF偏極ビームラインやスピン干渉シグナルの取得に成功、低周波ながらMIEZEシグナルの観測にも成功した。スーパーミラーシートの形状コントロールは手こずっているが、圧力を制御するナノプリントを用いて、数センチ平方メートル程度と小さいながらかなりの改善が見られた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の2次元集光ミラー開発は、一品だけの世界最高性能を目指すよりも開発後の「普及」、実用化に力点をおいて、将来的には安価で製作可能となることが期待出来ることを重視している。そのため、EEM等の表面研磨を伴う曲面基板製作は曲率が大きいものは困難であり、かつあまりにコストがかかるので、念頭におかず、スーパーミラーシートの形状制御を行ってきた。H24年度にスーパーミラーシートの形状固定は数センチ平方メートル程度と小さいながら改善が見られたので、大面積化の改良を行うと共に、限界も見定める。 また、スーパーミラーシートの利用のみに拘らず、高価な研磨を避けられて、安価にサブナノメートルの表面粗さで曲面制御可能な基板製作とその基板への製膜法も検討し、2次元中性子集光ミラーデバイスの製作法のまとめを行う。またILLにおけるVCN実験もその展開を見定め、まとめを行う。
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