研究課題/領域番号 |
23360430
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
原子力学
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研究機関 | 独立行政法人日本原子力研究開発機構 |
研究代表者 |
永石 隆二 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 原子力基礎工学研究部門, 研究主幹 (00354895)
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キーワード | 懸濁溶液 / ゼオライト / 純水 / 海水 / 定常照射 / 放射線分解 / 水素分子 / ゼータ電位 |
研究概要 |
反射分光装置のデザイン・開発の遅延によってパルス電子線照射装置を用いた懸濁溶液中の高速反応の測定に着手できなかったため、固-液の懸濁溶液として、福島第1原発事故後の汚染水処理での吸着材として注目されているゼオライトが共存した水溶液を対象に、ゼータ電位測定装置等を用いた化学状態分析を先行させるとともに、定常照射源であるCo-60 ガンマ線照射装置を用いた放射線分解による水素発生等の生成物分析を進めた。 アルミノケイ酸塩であるゼオライトを純水または海水成分を含む水溶液に浸すと、ゼオライトの種類、表面構造等に依存するものの、水溶液は概ね中性からアルカリ性の酸性度を示し、ゼータ電位は負の値を示した。このゼオライトが共存した水溶液を定常照射すると、発生する水素分子量はゼオライトが共存しない場合に比べて多く、水分濃度を水分がゼオライトに吸着する程度から、ゼオライトが水溶液に微量含まれる程度まで変えても、その関係は維持された。 ゼオライトが共存した水溶液中の水素発生では、放射線のゼオライトへのエネルギー付与が水の分解に関与していることが示唆される一方、シリカコロイド水溶液中の放射線誘起反応の研究と同様に、水溶液中で水素分子を酸化する水酸化ラジカルがゼオライトに吸着することで、水素分子が酸化反応を逃れることも考えられる。以上の研究は、懸濁溶液中の高速反応の測定にあたって観測する対象や条件を選定する上で意義ある基礎データであるとともに、平常時並びに事故時の固体吸着材を用いた水溶液中の放射性物質の除去・回収における水素安全評価にとっても重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
懸濁溶液中の高速反応の測定に用いる線形加速器-分光装置システムが故障し、修理や運用再開に時間を要するとともに、そのシステムに導入する反射分光装置のデザイン及び開発に大幅な遅延が生じたため、23年度、さらに期間延長した24年度内の反射分光装置の設置及び試験の着手が困難となり、計画を延期する必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
期間延長した24年度内に反射分光装置のデザイン及び開発がほぼ完了したので、早急に製作して線形加速器-分光装置システムに設置し、これを用いた固-液の懸濁溶液中の過渡分光測定に着手して速やかに動作確認、改良等を実施する。マシンタイム、故障、メンテナンス等で線形加速器を利用しない/できない期間は、上記「研究実績の概要」と同様に、懸濁溶液の化学状態分析や調製法確立を実施するとともに、高速反応での観測対象や条件を選定するために、懸濁溶液の定常照射による生成物分析を実施する。
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