研究実績の概要 |
希土類元素(RE)をドープしたセリウム(Ce)酸化物(以下、RDC)を対象として、実験及び計算科学手法により、酸素不定比に起因する欠陥構造の探索と酸素ポテンシャルのモデル化を行った。酸素不定比の変化により酸素イオン分布が変化することを明らかにし、RE種類を考慮した化学熱力学法によるRDCの酸素ポテンシャルモデルを構築した。 液相反応法によりネオジム(Nd)を0~25%ドープした高品質な試料を調製し、X線回折測定により原子レベルまで均質に固溶していることを確認した。これらの試料に対して、高感度センサー付きX線回折測定装置による精密測定、及び測定結果のRietveld法及び最大エントロピー法(MEM)解析を行い、O2-及び(Ce3,4+,Nd3+)イオンの結晶格子内サイトは基本的にはNd濃度に係らず変化しないが、O2-と(Ce3,4+,Nd3+)イオンの間等、相対的にO2-イオンに関係した電子密度が高いサイトがNd濃度に応じて現れることを見出し、本法の軽元素への適用性を確認した。また、同試料に対してレーザーラマン測定を行い、Nd濃度に応じて化学結合状態の変化を表わす新たなラマンピークが出現することが分かった。 実験で得られた情報を考慮し、酸素不定比を有するRDCに対して、電子構造計算とクラスター展開法を組み合わせた手法により、酸素空孔と希土類が対を成すクラスター等、いくつかの欠陥構造の安定性と安定構造における酸素濃度を評価した。また、ドープした希土類の種類の効果を新たに考慮し、RDCの酸素不定比と酸素ポテンシャルの相関を化学熱力学法により解析したところ、希土類種類によりRDCの酸素ポテンシャルが影響を受ける可能性、CeはCeO2中とUO2中で異なる価数で存在する可能性等が明らかとなり、これらの結果を(U,RE)O2±xの酸素ポテンシャルモデルに反映した。
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