研究概要 |
本研究では「エネルギー需要」を規定するサービス水準を明確にすることを出発点とし,技術や政策的手段によるその変容の可能性について検討する。そして必要水準を満足する需要から供給にいたる各種パスを総合的に評価するための「家庭用エネルギー最適需給統合モデル」を構築することを目的としている。初年度の23年度は,実証試験住宅において,太陽熱温水器,CO2冷媒ヒートポンプ給湯器,潜熱回収型ガス給湯器,エアコンを各種条件にて運転試験を行い,機器の運用方法を変化させた場合に,消費電力(ピーク時電力及び電力量)と居住者の快適性がどのように変化するかをシミュレーションすることによって機器の制御可能性に関する検討を行った。 ・給湯器関連の実測 給湯需要を模擬的に発生させ,太陽熱-潜熱回収型ガス給湯器,太陽熱-CO2冷媒ヒートポンプ給湯器を交互に運転させ,季節ごとの太陽熱回収量,運転特性データを収集した。これまであまり分析が行われていない太陽熱温水器における集熱量の季節依存性,バックアップ用給湯器の負荷率依存特性,外気温依存特性などを分析するためのデータが得られつつある。 ・エアコンの運転方法の変化によるピークシフトの可能性の検討 エアコンの運転条件(時間,温度)を変化させて運転させ,室内温度・湿度分布,消費電力を計測した。データを分析し,快適性を維持したままで電力ピークをシフトさせることができるかどうかについて検討した。エアコンの運転特性を表す波形が得られ,省エネとピークシフトのトレードオフ関係などについて一定の知見を得た。今回は,冬期しか実験できていないため,夏期も同様の実験を行い,分析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,省エネ,創エネ,エネルギー貯蔵など、家庭部門のエネルギー消費に影響を与えるすべての要素を把握し分析することを目的としているが,自動車については運輸部門のエネルギー消費として当初の計画では対象外と設定していた。しかし,昨今普及をみる電気自動車は,家庭で充電されることも多く,搭載電池容量も大きいことから,今後の家庭用エネルギーの需要としても,調整力としても,考慮しておくことは極めて肝要であると考える。よって来年度以降は,電気自動車も対象として検討を計画している。
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