研究課題/領域番号 |
23360433
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荒川 忠一 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30134472)
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研究分担者 |
飯田 誠 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (40345103)
小林 洋平 舞鶴工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (50548071)
井上 俊司 独立行政法人海上技術安全研究所, その他部局等, 研究員 (50575157)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 風力発電 / 洋上風力 / 浮体式洋上風力 / 負性抵抗 |
研究概要 |
日本における将来の再生可能エネルギーの中心的存在となりえる浮体式洋上風車を安全に運転し、その普及を支えるための制御法の基礎研究を実施している。つまり、浮体の搖動と、定格風速以上で行われる風車回転翼のピッチ制御が連成し、ネガティブダンピング現象を引き起こす可能性があるため、風車出力を落とさずに安定に運転する方法を探求する。 海上技術安全研究所・海洋構造物試験水槽を利用して実施した、ブレードピッチ制御可能な大型風車と浮体模型の組み合わせによる水槽試験の結果を基に、波浪による浮体動揺下でブレードピッチ制御を行った状態での、浮体および風車の全体挙動およびブレードピッチ制御パラメータが全体挙動に及ぼす影響を、数値モデリング手法を援用して調査した。 一方、舞鶴高専では,実験模型の製作が完了し、ネガティブダンピング現象を解明するための実験が行われた。現状では、風車模型の回転数が十分でなく翼のスラストではなく風からの抗力で発生するネガティブダンピング現象を明らかにしつつある。 これらの研究をもとに、平成23年度に開発したネガティブダンピングを再現するシミュレーションツールの精度向上に係る検討を実施した。風車運動については、アメリカ再生可能エネルギー研究所が研究を進めるFASTコードを利用し、浮体運動にはWASPと呼ばれる動的解析コード、これらを連成するシステムとして、マルチボディ解析のADAMSを効率的に組み褪せたシミュレーション体系を構築した。 これらの実験とシミュレーション解析を組み合わせた総合的な研究で、大規模な浮体式洋上風車において発生を恐れるシビア・アクシデントを未然に防ぐ制御法を見出しつつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験、解析ともに、ほぼ予定通り進行している。研究の初期段階であるため、講演論文の発表に機会は多数あるものの、まだ、査読論文が少ないことを問題点として認識している。 風力エネルギーの国際的シンポジウムとして、EWEA2103(ヨーロッパ風力学会2013)、およびノルウエーにおけるDeep Offshore 2013(大深度洋上風力国際シンポジウム)で、実験・シミュレーション双方の講演発表を行い、世界的な研究者らと議論を深めている。ネガティブ・ダンピングを抑制する方法として、風車回転翼のピッチ制御を、スラストの増減を逆方向にする必要がある。そのとき、定格出力に裕度を持たせる方法と、回転数に裕度を持たせる方法が議論されている。さらに、浮体構造物のダンピングを大きくし、ネガティブダンピングが発生しない方向性をとなるグループもある。これらの議論について、理論、実験、経済性から評価することが求められているため、慎重に研究を進めている。体系的な結論を得たのちに、論文としてまとめる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
浮体式洋上風車のさまざまな運転条件に対応した実験を行い、それに対応するシミュレーションを丹念に積み重ね、普遍的な結論を導き出すよう、研究を推進していく。 実験においては、誤差の原因となる係留方法について詳細な検討を行い、新しい係留方法で追加実験を行い、精度の向上を図る。また、搭載する小型風車についても、より信頼性の高めたものを利用する。 制御法については、前述の方法のみならず、複合的なシステムを含めた信頼性の高い新しい方法の提案を目指して研究を進めていく。また、波力発電とのハイブリッドによるダンピング効果を含めた基礎研究を並行して行い、制御法の発展を図る。 昨年度にもまして、国際学会での発表を続け、国際的な広い視点で研究を進め、研究者のネットワークづくりを行い、さらに大きな成果を得ることと、その成果の普及を図ることを目指す。
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