研究概要 |
本研究では、酸化物と炭素材料との複合体を用いることで、低過電圧、高効率な金属-空気電池電極を得ることを目的としている。炭素材料は高表面積の反応場と導電性の付与、またメソスケールの構造体である.これまでに本研究者らが高速充放電リチウムイオン電池電極のための炭素との複合体を得るために確立した手法・条件によって合成したガンマ-Fe_2O_3/炭素複合体をはじめとして様々な酸化物について,リチウム-空気電池正極として評価した.また,ペロブスカイト系酸化物は空気極触媒としてはたらく可能性があること,また,空気中の酸素を使用しない空気電池(正確には酸素電池)の電極となる可能性があると考えた.Ca_xSr_<1-x>FeO_<2.5>については,ハイドロガーネットが生成してしまい安定な酸素挿入・脱離ができなかったが,CaやSrをLaで半分以上部分置換することによって,ハイドロガーネットの生成を防ぐことができたLa_<0.5>Sr_<0.5>FeO_z(z~2.9)などにおいては,酸素を電気化学的に入れる反応はほとんど進行しなかったが,参照極Hg/HgOに対して,-0.05V付近および-0.9V付近で酸素が引き抜けることが分かった.したがって,電気化学的操作により酸素を外部に供給することができる.SrFeO_<2.5>,SrCoO_<2.5>,La_2CuO_4など電気化学的に酸素を入れる系は外部の酸素を吸収する,見出した化合物は引き抜きから始められる化合物であるので,外部への酸素供給源となる.したがって,気相(空気)以外の酸素源として空気極への酸素供給物質となる可能性がある.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、触媒中の金属の種類と過電圧の大きさの相関の有無、相関がある場合はその序列を調べることができている.また,気相からではなく,固相から酸素を供給することが可能かどうか調べた結果,電気化学的に空気極に酸素供給が可能だと考えられる物質を見出すことができた.反応メカニズムの検討の観点からは,電気化学反応における電荷移動の抵抗を求めるため交流インピーダンス測定を行い,電解質中のリチウムイオン濃度などの条件を変えて調べることも進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
水系で酸素引き抜きが可能な系の候補として,LaNiO_3もハイドロガーネットができず安定であった.しかも既に空気極触媒としての検討を行っている研究グループもあり,酸素量の変化が可能な可能性が高いことから,酸素の供給源の化合物として期待できる.こうした新しい酸素源固体についても力を入れて研究を進める.同時に当初計画通り,高効率充放電,すなわち放電電位を上げ,充電電位を下げるための指針を得ることを目的として,反応機構の解明を目指す.まず,昨年度新しく酸素の引き抜き・再挿入が可能であることを見出した電気化学的酸素引き抜き・挿入の反応速度,すなわち,電荷移動抵抗,酸素拡散について詳細に調べる.
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