研究課題/領域番号 |
23360435
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
日比野 光宏 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20270910)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 金属-空気電池 / 金属-酸素電池 / 空気極 / 電極触媒 / 複合体電極 |
研究概要 |
1 様々な酸化物と炭素材料との複合体の金属-空気電池電極特性評価 欠陥ペロブスカイト構造のBaFeO2.5を定電流酸化すると,単斜晶(JCPDS No. 20-0131)が現れ,0.32 V(vs.Hg/HgO)付近で単斜晶のBaFeO2.67と立方晶BaFeO3-dの二相共存領域の電位平坦が見られた。さらに通電を続け十分に酸化するとBaFeO3が得られた.BaFeO3はX線回折測定および磁化率測定によって確認した.したがってBaFeO2.5は室温であっても電気化学的にBaFeO3まで酸化されることが明らかとなった. 六方晶ペロブスカイト構造のLaNiO3は定電流還元に伴い-0.60 Vから-0.75 Vにかけての電位変化の緩やかな領域で酸化物イオンの引き抜きとともにNiイオンが3価から2価へ変化し,すべて2価(z=2.50)となったとき急激に電位が低下した.XRDによって構造を調べたところ,z=2.8まで六方晶であったが,z=2.6のときに新たなピークが現れ,z=2.5では単相となった.立方晶から僅かに歪んだ単斜晶のLaNiO2.5になったと考えられる.LaNiO2.5まで還元した後にもLaNiO3までの酸化が可能であったが,再酸化時には六方晶に戻らず,以後の還元酸化の繰り返しは単斜晶のままで進行した. 以上からBaFeO2.5もLaNiO3も酸素組成を電気化学的に大きく変えられることを初めて明らかにした.したがって空気電池を含め酸素を活物質として利用する電池の電極として期待できる. 2 反応メカニズム解析 Ca0.5La0.5FeO2.863における-0.05V付近での通電電気量と電流密度は直線関係となった.その傾きとSEM観察から得られた粒子サイズとから化学拡散係数を見積もることができ,1.2×10-13 cm2/sという高い値であることが明らかとなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、電気化学的な酸化・引き抜きが可能な金属酸化物の特性を調べるとともに,大きく酸素量を変えられる物質を見出すことができた.また速度論的な観点からの分析も進み,室温で電気化学的に酸素の出し入れが可能な酸化物において,実際に酸素の化学拡散係数を求めることができ,しかもリチウムイオン電池材料のリチウム化学拡散係数に匹敵するほどの大きさで酸素が拡散していることも明らかにできた.
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今後の研究の推進方策 |
室温で電気化学的に酸素を脱挿入できる材料が複数見つかった.したがって,気相中だけではなく固体内の酸素を利用した金属-酸素電池の構築が実現が期待できることがわかった.今後は有機電解質を用いて,負極として金属を用いて実験を進める.
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