研究課題/領域番号 |
23360436
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
佐藤 博 大阪大学, 基礎工学研究科, 准教授 (60283743)
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研究分担者 |
大垣 一成 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (80107078)
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キーワード | ガスハイドレート / 自己保存性 / 天然ガス / 新エネルギー / エネルギー輸送 |
研究概要 |
ガスハイドレートによる天然ガス輸送の鍵を握る、ガスハイドレートの自己保存性(大気圧における平衡温度193Kから遠く離れた260K近傍での分解速度が非常に小さい現象)について、分解速度の温度・圧力依存性と微細構造変化の観察により、その発現機構を明らかにすることを目的としている。 本年度は、分解速度の圧力依存性を検討するため高圧熱天秤を導入した。ガスハイドレートの分解によりハイドレート試料の質量が減少するので、これを捉える装置である。本装置により、メタンハイドレートの分解速度が実験圧力に依存することを確認し、またその圧力依存性は温度によって異なることも確認した。平衡圧力自体が温度によって変化するため、大気圧下のみでの検討では不可能であった、自己保存性に対する分解推進力(平衡圧力と実験圧力の差)の効果と、温度の効果とを分離して評価できるようになった。来年度以降は調書記載の計画通り、すでに大気圧において自己保存性に影響を与えることを報告している微量の塩添加系と、メタンハイドレートとは平衡圧力や結晶構造の異なるメタン以外のガスハイドレートについて順次、各圧力における分解速度の測定を実施していく。 微細構造観察については、分解進行に伴う微細構造変化は明らかにしているが、実験条件ごとの違いはまだ確認されていない。今後は分解速度測定により自己保存性に大きな差のある条件を見出した後に、それらの条件を中心に実施する計画である。 以上述べたように、初年度である本年度は自己保存性に対する、ハイドレートの種類、温度、圧力、塩添加の効果の知見を蓄積する段階であり、成果発表には至っていないが、引き続き計画通り研究を進め、研究期間内に自己保存性の発現機構の解明を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度検討項目のうち、高圧熱天秤による分解速度測定は予定通り進捗しており、メタンハイドレートの分解速度の圧力依存性が明らかになった。一方、ハイドレートの微細構造観察においては、自己保存性の強い条件と弱い条件での微細構造の違いを見出すには至っていない。実際に違いが小さい可能性もあるため、分解速度の検討を優先して進めている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度購入した高圧熱天秤は予期したとおり機能し、分解速度に対する温度・圧力の効果が明らかになりつつある。当初計画通り、引き続きメタンハイドレートの分解速度測定を行うとともに、メタン以外のガスハイドレートについても検討する。そして自己保存性の発現機構の解明を目指す。 一方、微細構造観察については、実験条件による微細構造の差が小さい可能性が高いため、その差が最も現れやすいと考えられる、小さな条件の変化で分解速度が大きく変化する領域を明らかにし、その領域内にて実施することとする。そのため、しばらくは分解速度測定を優先して実施する。
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