研究課題/領域番号 |
23360437
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研究機関 | 独立行政法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
玄地 裕 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 研究グループ長 (50292777)
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研究分担者 |
井原 智彦 独立行政法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 研究員 (30392591)
福田 早苗 大阪市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任講師 (50423885)
鳴海 大典 横浜国立大学, 環境情報研究院, 准教授 (80314368)
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キーワード | エネルギー / ヒートアイランド / 健康影響 / 適応策 / 重篤度 |
研究概要 |
節電により全国的に空調が制限される事態になった。このことは、暑熱環境悪化による健康被害の定量化と空調電力消費削減のトレードオフ関係を定量的に示す本研究の意義が、今後さらに重要になることを意味する。 平成23年度の主な成果は以下の通りである。 重篤度の整備: 健康被害を定量化する際に重要な睡眠障害、疲労、熱中症の重篤度を、内科医、および睡眠、疲労、精神科、熱中症の専門医に実施したインタビュー結果を基に整備した。その結果、睡眠障害については、環境性、ピッツバーグ睡眠質問票の閾値に基づく重篤度が得られ、その範囲は0.069~0.101の範囲であった。同様に、疲労については短期、慢性、レベルI~IIIの別で重篤度が得られ、その範囲は0.050~0.459であった。熱中症の重篤度は重症度I~IIIで0.01~0.05の範囲であった。 疲労、睡眠に関する夏季調査: 東京23区と大阪在住の住民を対象として疲労、睡眠に関する調査を実施した。 大阪では、女性30-40代を対象に、7月8月9月末の指定の1週間に暑さの主観的・客観的指標を用いた調査を実施した。活動度計の計測結果、疲労得点と実測温度及びアメダス平均気温(大阪市のものを使用)との関係を整理した結果、疲労得点は、午後2時の気温(実測)とは、相関係数をもとめると負の相関を示したが、アメダスによる平均気温との関係は認められなかった。活動度計計測結果による睡眠時間は、気温が低いときに睡眠時間が長くなる傾向が明らかになった。また、自律神経機能が時期により変化する結果が得られ、交感神経への影響も考慮する必要性が示唆された。 東京23区に対しては、30代~60代男性に疲労、睡眠と空調利用に関するアンケートを実施した。その結果、夏季エアコン利用は睡眠の質をよくするが設定温度の影響も大きいことが明らかになった。また、普段からエアコン利用に積極的な回答者は外気温上昇に伴い疲労蓄積が起こるという統計的に有意な結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
重篤度の整備が進み、健康影響の定量化が予定通り可能になった。また、空調利用の有無による疲労、睡眠に関する調査結果も得られ、今後、節電対策による健康被害の増減を議論する基礎的なデータとして、自覚的調査結果だけでなく医学的客観的データも得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
予算的な制約から複数年度の広範囲なアンケート調査が困難となったため、既存の疫学調査に関係する公的統計や実施した調査結果から暑熱環境時の健康被害を包括的に整備する。 また、東日本大震災に伴い、節電と健康の影響を評価することも視野に入れた検討を実施していく。平成23年度に実施した調査結果の整理と共に、節電が実施された平成23年度の熱中症などの公的統計などのデータの収集、及びシミュレーションに必要なデータ整備を開始する。
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