研究課題/領域番号 |
23370005
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
生態・環境
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
木村 正人 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究院, 教授 (30091440)
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キーワード | ショウジョウバエ / 寄生蜂 / 宿主利用 / 選抜実験 / 抵抗性 / 汎用性 / 寄生力 |
研究概要 |
本年度予定していた系統サンプリングについては、論博研究者であるAwit氏がインドネシア・ボゴールにおいて、また研究協力者である三井氏が対馬、西表島で行い、ショウジョウバエ15系統、寄生蜂5系統を確立した。また同時に、これら3地域におけるショウジョウバエとその寄生蜂の種構成を明らかにした。さらに、系統が確立できた寄生蜂について、宿主利用を実験的に調べ、その生息地の宿主の種構成が寄生蜂の宿主利用に多大な影響を及ぼしていることを明らかにした。 本年度は、上記の研究に加え、ハエの抵抗性に関わる遺伝子のゲノムワイドスクリーニングとその機能解析を行う予定であったが、この実験に使用予定の寄生蜂系統の状態が思わしくないため、24年度に予定していたハエの抵抗性系統の選抜実験を行い、抵抗性獲得のコストと抵抗性の汎用性について査定した。約10世代に亘る選抜の結果、完全に抵抗性を示す系統と全く抵抗性を示さない系統を得ることができた。選抜に対する反応はきわめてすみやかなことから、抵抗性に関わる遺伝子は少数であると考えられた。次に、これらの系統についてさまざまな適応形質、また他寄生蜂数種に対する抵抗性を調べた結果、抵抗性獲得のコストはきわめて小さいこと、またこの抵抗性には全く汎用性がないことが明らかになった。このことは、抵抗性が容易に進化すること、そしてそのため地域ごとに異なった寄生蜂-宿主群集が形成されることを示しており、拡散共進化のプロセスを理解する上で重要な知見である。 さらに、24年度に予定していた寄生蜂の寄生力の選抜を開始した。現在、5世代に亘る選抜を終えたが、24年度にかけさらに5世代ほど選抜し、寄生力獲得に関わるコストおよびこの選抜された寄生力の汎用性を査定する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた抵抗性に関わる遺伝子のゲノムワイドスクリーニングとその機能解析は行えなかったが、選抜実験は極めて順調に進み、コストおよび汎用性をほぼ査定でき、この結果は拡散共進化の理解に向け極めて意義がある。また、この系統を用い抵抗性遺伝子の同定が可能であり、それは24年度に行う。系統サンプリング、種構成・宿主利用の調査はほぼ予定どおりである。
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今後の研究の推進方策 |
まず、選抜実験により得られた抵抗性系統と非抵抗性系統についてAFLPによるQTLを行い、抵抗性に関わる遺伝子の同定を行う。さらに、この遺伝子の機能をDNAデーターベースから推測するとともに、発現解析を行い、この遺伝子がどのようなメカニズムで抵抗性を高めているかを明らかにする。また、寄生力について選抜した寄生蜂系統を用い、寄生力獲得に関わるコストおよびこの選抜された寄生力の汎用性を査定する。さらに、キイロショウジョウバエの突然変異系統を用い、昨年度行う予定であった、ハエの抵抗性に関わる遺伝子のゲノムワイドスクリーニングとその機能解析を行う。
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