• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実績報告書

ショウジョウバエー寄生蜂系における拡散共進化の遺伝的メカニズムと進化動態の解明

研究課題

研究課題/領域番号 23370005
研究機関北海道大学

研究代表者

木村 正人  北海道大学, 地球環境科学研究科(研究院), 教授 (30091440)

研究期間 (年度) 2011-04-01 – 2015-03-31
キーワードショウジョウバエ / 寄生蜂 / 共進化
研究概要

共進化系の動態を理解する上で重要な事項の一つは,地理的分化の様相を明らかにすることである.これまでに,地理的分化に関する理論として「共進化の地理的モザイク理論」が提出されているが,この理論に基づいた研究は少ない.そこで,今年度,これまでに得られたショウジョウバエと寄生蜂を用い、このモデルの検証を行った.まず,ミトコンドリアと核の分子マーカーを用い,琉球列島・台湾におけるショウジョウバエ3種と寄生蜂1種の系統地理を調べるとともに,寄生蜂の選好性,寄生能力,ハエの抵抗性について調べた.その結果,これらショウジョウバエと寄生蜂はこの地域において異なる侵入・定着の歴史を有していた.また,宿主選好性,寄生力,寄生蜂に対する抵抗性についても,地理的分化が認められたが,その変異は大きくなかった.そこで,東南アジアを中心に広範囲に分布するDrosophila bipectinataとLeptopilina victoriaeそれぞれの抵抗性と寄生能力の地理的分化を調べた.その結果,琉球列島と南太平洋諸島より得られたD. bipectinata系統ではL. victoriaeに対する抵抗性は弱かったが,東南アジア,インド,アフリカから得られた系統は強い抵抗性を示した.また,L. victoriaeの地理系統間には寄生能力の相違が見られた.これら抵抗性と寄生能力の地理的パターンは「地理的モザイク理論」を支持し,宿主,寄生者は,両者の地域特異的な相互関係を通し,抵抗性,寄生能力を進化させていることが示された.
また,この3年年間の採集により,日本のショウジョウバエの寄生蜂相をほぼ明らかにすることができた.具体的には,幼虫寄生蜂として,Braconidae科のAsobara属8種,それ以外の属5種,Figitidae科のLeptopilina属12種,Ganaspis属6-8種,それ以外の属4種の計35-37種である.それらのうち半数以上は未記載種で,今回2種について新種記載を行った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまで採集してきた飼育系統を用いたDrosophila bipectinataとLeptopilina victoriaeの関係性の地理的変化の様相の解析については順調に進んだ.このことから,少なくともこの2種について共進化の動態の理解が可能になった.また,これまでの調査により,少なくとも日本のショウジョウバエの寄生蜂相に関してはほぼ解明できた.さらに,インドネシアの果実食ショウジョウバエの寄生蜂については,かなりの程度解明できた.これらのデーターは今後のショウジョウバエ―寄生蜂の共進化系の研究の基礎となるものである.また,寄生蜂が宿主に注入する毒液の致死性に関する研究も順調に進んでいる.一方,宿主の寄生蜂に対する抵抗性遺伝子,寄生蜂の寄生力に関わる遺伝子に関する研究は若干遅れている.原因としては,抵抗性遺伝子に関しては,これまで使用していた遺伝子マーカーが必ずしも適切なものでなかったことにより,寄生力遺伝子に関しては,使用した系統に問題があったためである.これらの問題については,次年度,新しい方法を用いて取り組む予定である.

今後の研究の推進方策

昨年度に引き続き,宿主の寄生蜂に対する抵抗性遺伝子,寄生蜂の寄生力に関わる遺伝子の同定を試みる.抵抗性遺伝子についてはすでにある変異系統,寄生力遺伝子については改めて作成した純系を用い,抵抗性系統と非抵抗性系統の戻し交配個体,また高寄生力系統と低寄生力系統の戻し交配個体について,次世代シークエンサーによるDNA解析と各戻し交配個体の寄生力を査定することにより,寄生力の高い系統に特異的なDNA断片を検出し,それに基づいて寄生力に関わる遺伝子の同定を試みる.
拡散共進化系では,寄生蜂は複数の宿主種を利用する.こうした宿主は,種により体サイズ,成長速度も異なるため,寄生蜂は寄生する種により成長戦略を変更する必要がある.寄生蜂がそうした宿主の違いに対応し,どのように成長を制御しているかは,拡散共進化系の動態を理解する上で極めて重要である.今年度は,Leptopilina victoriae,Asobara pleuralisの2種の寄生蜂と,体サイズ,成長速度が大きくことなる宿主Drosophila albomicans, D. ananassae, D. lacteicornisを用い,これら2種の寄生蜂がこれらの宿主にどのように対応しているかについて,寄生された宿主の体サイズ,成長速度の変化を測定することにより解明する.

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2014 2013

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] What determines host acceptance and suitability in tropical Drosophila parasitoids?2014

    • 著者名/発表者名
      Kimura, M. T., and Suwito A.
    • 雑誌名

      Environmental Entomology

      巻: 43 ページ: 123-130

    • DOI

      10.1603/EN13141

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Diversity and host association of parasitoids attacking mycophagous drosophilids (Diptera: Drosophilidae) in northern and central Japan2013

    • 著者名/発表者名
      Kasuya, N., Mitsui, Y., Aotsuka, T., and Kimura, M. T.
    • 雑誌名

      Entomological Science

      巻: 16 ページ: 227-234

    • DOI

      10.1111/j.1479-8298.2012.00544.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Venom components of Asobara japonica impair cellular immune responses of host Drosophila melanogaster2013

    • 著者名/発表者名
      Furihata, S. X., Matsumoto, H., Kimura, M. T., and Hayakawa, Y.
    • 雑誌名

      Archives of Insect Biochemistry and Physiology

      巻: 83 ページ: 86-100

    • DOI

      10.1002/arch.21093

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Diapause and cold tolerance of Asian species of the parasitoid Leptopilina (Hymenoptera: Figitidae).2013

    • 著者名/発表者名
      Murata, Y., Novković, B., Suwito, A., and Kimura, M. T.
    • 雑誌名

      Physiological Entomology

      巻: 38 ページ: 211-218

    • DOI

      10.1111/phen.12024

    • 査読あり
  • [学会発表] 宿主の違いは寄生蜂の体サイズ・成長速度にどのような影響を及ぼすか?2014

    • 著者名/発表者名
      滝ヶ平智博・木村正人
    • 学会等名
      第61回日本生態学会
    • 発表場所
      広島・広島国際会議場
    • 年月日
      20140315-20140318
  • [学会発表] ショウジョウバエの寄生蜂の季節適応2013

    • 著者名/発表者名
      木村正人
    • 学会等名
      日本昆虫学会第73回大会
    • 発表場所
      札幌・北海道大学農学部
    • 年月日
      20130913-20130916

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi