研究課題
本研究では、樹木のデモグラフィに関する動態パラメータと葉の光合成,分解など機能パラメータを統合的に解析することにより,①葉の機能(光合成・分解速度)は樹木のデモグラフィと関連性をもつか?②撹乱・地形・階層性など森林の時空間的不均一性と機能・動態パラメータには関連性があるか?③同一森林群集内で樹木の共存に貢献する機能および動態パラメータは何か?という問いに答えることを目的としている。そのため、温帯落葉樹から熱帯林の成熟林およびその周辺の発達段階の異なった森林において、具体的に以下の内容を行っている。(1)樹木の動態パラメータに関するデータベース作成、(2)葉の形質・機能パラメータに関するデータベースの作成、(3)動態・機能パラメータの関連性解析、(4)撹乱・地形・階層性と機能・動態パラメータの関連性解析、(5)撹乱傾度に沿った群集の集合則の解明国内外のいくつかの森林について、上記の(1)(2)は完成しつつある。今年度は、上記の(3)(4)を実施すべく、とくに小川群落保護林およびその周辺で、昨年度充実させた萌芽に関するデータおよび低木類の生態的特性のデータベースを用いた解析を行った。萌芽能力にはサイズ依存性があるため、種間比較が難しかったが、今回サイズ依存性を考慮した萌芽能力のパラメータを開発し、萌芽能力の種間比較と、それに機能形質パラメータがどのように関わるかを解析することに成功した。その結果、萌芽能力は種間によって大きく異なり、稚樹の萌芽能力は防衛投資に関わる機能形質と負の相関を持つといったことが発見された。この関係は森林の撹乱体制と深く関わっていると考えられる。萌芽能力に関する研究は、従来火事や台風など大規模な撹乱が起こる生態系で多く行われてきたが、大規模な撹乱があまり起こらない森林でも、萌芽能力が森林の多種共存機構に関わっている可能性を示す重要な結果である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度充実させたデータベースを用い、萌芽能力の種間差とそれに関わる機能形質のパラメータの解析を行った。この結果は、現在二度の査読を経て改訂中で、近いうちに受理されるものと思われるため。
これまでに作成されたデータベースをもとに、機能形質と群集組成、更新特性、落葉分解速度、葉の被食量などとの関連性の解析をさらに進める。また、他の地域で得られたデータとの比較を進め、小川群落保護林での結果の一般化を目指す。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 1件) 図書 (3件)
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