研究課題/領域番号 |
23370012
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
椿 宜高 京都大学, 生態学研究センター, 教授 (30108641)
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研究分担者 |
高橋 純一 京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (40530027)
清 拓哉 独立行政法人国立科学博物館, 動物研究部, 研究員 (40599495)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 生態学 / 進化 / 昆虫 / 形質置換 / 色彩多型 / 遺伝的多様性 |
研究概要 |
新潟県から富山、福井、滋賀、奈良、和歌山にかけて、Mnais costalisとM. pruinosa2種の同所的集団、および異所的集団を調査し、日照条件と関連する生息地選択を形態形質置換との関連が明らかになってきた。 種認識の能力が同所的集団と異所的集団の間で異なるかどうかを実験的に明らかにするために、野外集団で除去実験を行った。Mnais costalisの異所的集団では、性の識別に翅色が重要なシグナルとなっているが、同所的集団では翅色はむしろ種の識別にシグナルとして機能していることがわかってきた。 翅の色がシグナルとなっているので、種認識や性識別における色彩の効果を再検証する。 これまでに日本全国約50カ所から収集した1200個体の標本からDNAを抽出している。ミトコンドリアのCOI遺伝子の後半約1000塩基対を配列決定した。これまでの途中経過から、2種の遺伝的分化は非常に浅く、1%程度の変異が認められている。種間の遺伝的多様性を比較した場合、M. costalisにくらべ、M. pruinosaのほうが非常に高い値を示した。また、後者は地域集団ごとにハプロタイプの構成が分化していることが明らかになりつつある。 日本各地の研究者が採集した標本が、国立科学博物館に数多く所蔵されている。この標本をすべてスキャナーで取り込んで、デジタル化することに成功した。形質や色彩多型 の地理的変異を精密に地図化することが可能となった。2種間の相互作用が両種の複雑な地理分布に反映されていることが想定でき、最種間相互作用が地理分布に及ぼす影響を、世界で初めてシナリオとして描くことを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Mnais costalisとM. pruinosa2種の同所的集団、および異所的集団を調査し、日照条件と関連する生息地選択を形態形質置換との関連が明らかになってきた。M.costalisにおいて、翅色がシグナルとして機能し、異所的集団では性識別、同所的集団では種識別に有効であることが分かってきた。M.pruinosaにおいても同様な結果が得られるかを調べる。 これまでに日本全国約50カ所から収集した1200個体の標本からDNAを抽出している。これまでの途中経過から、2種の遺伝的分化は非常に浅く、1%程度の変異が認められている。種間の遺伝的多様性を比較した場合、M. costalisにくらべ、M. pruinosaのほうが非常に高い値を示した。また、後者は地域集団ごとにハプロタイプの構成が分化していることが明らかになりつつある。 日本各地から得られている標本を計測し比較することによって、翅色だけでなく、体サイズ、翅の形態についても形質置換が見られることが分かってきた。これらの結果から、M.costalisが先に日本に定着した種で、M.pruinosaが新たに日本に入り、分布を拡大した可能性を示唆している。そして、2種間の相互作用が両種の複雑な地理分布に反映されていることが分かってきた。
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今後の研究の推進方策 |
新潟県から富山、福井、滋賀、奈良、和歌山にかけて、Mnais costalisとM. pruinosa2種の同所的集団、および異所的集団を調査し、日照条件と関連する生息地選択を形態形質置換との関連において検討する。また、種認識の能力が同所的集団と異所的集団の間で異なるかどうかを実験的に明らかにする。 これまでに日本全国約50カ所から収集した1200個体の標本からDNAを抽出している。今後は標本数を追加するとともに、ミトコンドリアのCOI遺伝子の後半約1000塩基対を配列決定し、それらを用いてハプロタイプネットワークを推定する。M. costalisにくらべ、M. pruinosaは地域集団ごとにハプロタイプの構成が分化していることが明らかになりつつあるので、今年度は更にデータを蓄積して、これらの結果を精緻化する。 これらの結果を集大成して、近縁2種の相互作用が地理分布に及ぼす影響をシナリオとして描く。
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