研究課題/領域番号 |
23370013
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
村上 明男 神戸大学, 内海域環境教育研究センター, 准教授 (50304134)
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研究分担者 |
広瀬 裕一 琉球大学, 理学部, 教授 (30241772)
秋本 誠志 神戸大学, 分子フォトサイエンス研究センター, 准教授 (40250477)
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キーワード | シアノバクテリア / 光合成 / 光環境 / 海洋生態 |
研究概要 |
地球生態系の礎を創り、海洋の主要一次生産者でもあるシアノバクテリアにおいて光合成色素に多くのバリエーションがあることが近年の研究から見いだされている。これらのシアノバクテリアには、無脊椎動物共生藻・海藻着生藻・有光層下部の補償点深度限界域の優占種などが多いことから、特殊な生育環境の中で進化・多様化してきたと考えられる。本研究では、これらのシアノバクテリアの多様化および光合成色素を中心とした光合成適応機構の解明を目的として、各種培養株と培養系の確立、光エネルギー獲得過程の分光測定、共生・着生の形態観察などの解析を計画した。初年度の主な成果は以下の2点である。 1)ジビニル型クロロフィル:ジビニルクロロフィルb含量の異なるProchlorococcus3株全てについて実験培養系を確立し、時間分解蛍光スペクトルなどの分光測定を行った。その結果、モノビニル型光合成からジビニル型光合成の変換において、色素結合タンパク質の構造変化やタンパク質と色素との相互作用の変化がジビニル型光合成への確立に重要であることが示唆された。 2)海綿共生藻:サンゴを被覆し、死滅させることが懸念されている海綿Terpiosに共生するシアノバクテリアの光合成色素組成と共生形態を解析した。その結果、分離した海綿の共生シアノバクテリアは赤褐色を呈し、顕微分光解析から紅藻がもつフィコウロビリン含有型のフィコエリスリンをもつことが明らかになった。また、共生藻は海綿組織全体に高密度で分布していることから、海綿の黒い体色の主な要因は共生藻であることが示された。また、海綿の生育水深とフィコエリスリン含量との相関についての予備的解析を行い、光強度による色素含量の調節が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外洋性ピコシアノバクテリアの生理学および分光学実験レベルの培養を安定に維持することが可能になり、時間分解蛍光測定などの実験を進展させることが出来た。 フィールド採集したサンプルを用いた解析についての共同実験の体制を構築することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
共生・着生シアノバクテリアの培養株の安定化および無菌化を行う。 共生・着生シアノバクテリアのゲノム解析について新たに共同実験を開始する。 特殊なフィコビリンをもつピコシアノバクテリアについて、光合成色素間のエネルギー移動の解析を行う。 共生シアノバクテリアの光適応機構をフィールド採集した試料で解析する。
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