研究課題/領域番号 |
23370014
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
池内 昌彦 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (20159601)
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キーワード | 光受容体 / シアノバクテリア / シアノバクテリオクロム / 走光性 / 補色順化 / 細胞凝集 / 結晶構造 |
研究概要 |
当初の計画と結果は以下の通りである。 1.好熱性シアノバクテリアのc-di-GMP合成と分解にかかわるシアノバクテリオクロムを調製し、光受容機構とその役割相関の解明を目指した。新たに発見した光受容体Tlr1999の光変換機構を詳しく解析し、システイン残基が可逆的に脱着すること、またシステインを化学修飾しても外部から供給するチオール化合物で光変換反応を代行できることを示した。この結果は、光受容体の発色機構にチオールは必要であるが、システイン残基でなくてもよいことを示しており、その後のシグナリングにシステイン残基の役割が推定された。また、酵素活性を測定し、c-di-GMP合成(ジグアニル酸シクラーゼ)活性はないこと、c-di-GMP分解活性(ホスホジエステラーゼ活性)をもつことを示した。 2.珪藻のバクテリオフィトクロム様光受容体を調製し、その色素と分光特性と生理機能の解明を自指した。遺伝子発現を劇的に改良することに成功し、赤吸収型と遠赤色吸収型の可逆的光変換するタンパク質を単離することに初めて成功した。その結果、発色団はビリベルジンであることが推定され、当初予測していた新たなビリン合成酵素は本タンパク質の色素合成には関与しないことが明らかになった。 3.未同定のシアノバクテリオクロムの生化学、分光、機能、構造解析をすすめ、さらなる光受容システムの解明をめざした。結晶構造に基づいだシアノバクテリオクロムの分類法を検討し、新たな発色団結合モチーフをもつ遺伝子を同定できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
二次メッセンジャー分子c-di-GMPの合成と分解にかかわる新たな光受容体を同定できた。その光受容機構に関しては論文として発表した。珪藻のバクテリオフィトクロムに関しては、発現法を根本的に改良して、初めて色素タンパク質を同定できた。ゲノム解析法を改良して,新たな光受容体を同定、分類することができた。これらはすべて当初の計画を予定以上に遂行できたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定を繰り上げる形で、c-di-GMPの機能解析、藻類フィトクロムの解析、新たな補色順化光受容体を予測したNostocの解析を進める.
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