植物ホルモンのジベレリン(GA)とサイトカイニン(CK)が光環境やN条件に応じた物質分配を調節するシグナルである可能性を検証した。強光・弱光、高N・低N条件下で栽培したイタドリ(Polygonum cuspidatum)を用いて、(1) 外生GA、CK、GA合成阻害剤を添加したときの形態的・生理的形質の変化の解析を行った。また、(2) 光環境やN条件の変化や、葉と根のバランスの変化に応じた内生GA、CKレベルを定量した。 実験 (1) では、外生GA、CKによって葉/根比(L/R)が増加し、GA合成阻害剤によってL/Rが低下した。また、外生GAは葉面積あたりの重さ(LMA)を低下させ、GA合成阻害剤はLMAを増加させた。これらの形態的変化を通じてNareaや光合成能力、RGRが決定されていた。実験 (2)からは、L/Rが高い個体ほど内生GA、CK濃度が高いことが分かった。また、高N条件下で生育させた個体を低N条件に変化させたとき、葉への物質分配は低下し、摘葉によって葉の量を減らしたときは葉への物質分配パターンは大きく増加した。このときの内生GA濃度は、葉への物質分配比と高い相関を示し、GAが環境条件の変化に対応して最終的に葉へのC分配のバランスをとるシグナルである可能性が示された。茎頂や個葉ごとのGA濃度を解析したところ、上位の葉ほどGA濃度が高く、そのような個体では茎頂のGA濃度も高かった。これらの結果は、上位の葉で合成されたGAが茎頂に輸送され、茎頂における新葉の成長が促進された可能性を示唆する。
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