研究課題/領域番号 |
23370016
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
小関 良宏 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (50185592)
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研究分担者 |
太田 大策 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (10305659)
佐々木 伸大 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (80422088)
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研究期間 (年度) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | アントシアニン / シロイヌナズナ / 配糖化酵素 / アシルグルコース / デルフィニウム / 液胞 |
研究概要 |
シロイヌナズナにおいて、切断葉を強光下に置くことでアントシアニン合成を誘導できる系を確立した。そこでシロイヌナズナおける acyl-glucose dependent glucosyltransferase (AAGT) 候補遺伝子群である AtBGLU 遺伝子のノックダウン変異体について、その紅葉時のアントシアニン分子種の解析を行なったところ、AtBGLU10 ホモ変異体において野生型が合成・蓄積しているアントシアニン分子の修飾末端の p-coumaroyl 基の先のグルコースが欠失していることが明らかになった。そこでAtBGLU10 ホモ変異体からこのアントシアニンを抽出・精製し、これを基質とし、アシル-グルコースを糖供与体として、野生型の紅葉から得た抽出液を用いて酵素反応を行なわせたところ、グルコースの付加が確認された。また AtBGLU10 ホモ変異体に AtBGLU10 プロモーター:: AtBGLU10 cDNA のコンストラクトを導入した形質転換体の紅葉を解析した結果、アントシアニンの分子種が野生型に復帰し、相補されることが明らかになった。これまでに見いだされた AAGT は花弁において発現が見られ、しかもアントシアニンのアグリコンにグルコースを付加する酵素のみであったが、AtBGLU10 は花ではなく紅葉において発現が見られること、またアグリコンにグルコースを付加するのではなく、アシル基や糖で修飾されたアントシアニンの末端のアシル基の先に糖を付与することを明らかにした。またデルフィニウム萼片の粗抽出液において、AA7GT によってアントシアニンの 7 位に結合したグルコース残基に対し、p-hydroxybezoyl glucose がアシル基供与体およびグルコース供与体となってアシル基とグルコースが結合されていくことを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大腸菌による AA5/7GT タンパク質の大量発現につき、codon usage を最適化した cDNA を人工合成したものを用いたが高発現が見られず、また酵母の大量発現を用いた場合にも発現量はわずかであり、酵素タンパク質の大量発現が得られない状態のままで、酵素タンパク質の結晶化は未達成である。しかし、植物における AAGT 反応の一般性を明らかにするため、シロイヌナズナの AAGT 相同性遺伝子である AtBGLU 遺伝子群の解析を進めたところ、AtBGLU10 が葉において強光で誘導されるアントシアニン合成において修飾末端の p-coumaroyl 基の先のグルコースを付加する反応を司る酵素をコードしていることを明らかにした。このことは AAGT 反応は、花に限らずその他の植物の組織・器官におけるアントシアニン合成の修飾反応に関与していること、アグリコンだけでなく修飾残基の先へのグルコース付加に関与していることを明らかにしたものであり、植物における AAGT 反応の一般性を示したことが達成した大きな成果である。また修飾残基の先へのグルコース付加については、デルフィニウム萼片の violdelphin 合成において、7 位のグルコースに結合した p-hydroxybezoyl 基の先にグルコースを結合する酵素活性について、萼片から調製した粗酵素抽出液において p-hydroxybezoyl-glucose が糖供与体とともにアシル基供与体として修飾反応が順次起こることを見いだし、1 つの p-hydroxybezoyl-glucose が糖供与体とアシル基供与体の 2 つの役割を果たしていることを明らかにした点は予想外の達成度であった。
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今後の研究の推進方策 |
シロイヌナズナの AtBGLU10 以外の AtBGLU 遺伝子のホモ欠失体を作出し、現在メタボローム解析を進めている。特に当研究で確立した強光による切断葉のアントシアニン合成誘導系において、紅葉誘導時に発現誘導される AtBGLU 遺伝子のホモ欠失体に注目し、野生型とそれら欠失体の紅葉時に合成・蓄積してくる化合物についてメタボローム解析を先行させる。欠失体において消失している配糖化化合物の存在が明らかになったところで、その配糖化化合物について野生型の紅葉から抽出・精製を行い、その構造を決定する。また欠失体において蓄積している配糖化されていない化合物を抽出・精製する。これを基質としてアシルグルコースを糖供与体として野生型の葉から得た酵素抽出液を用いて配糖化活性を調べる。さらにその欠失体に野生型の AtBGLU 遺伝子を導入することによって配糖化化合物が合成・蓄積されること、すなわち相補されることを調べる。またデルフィニウムについて、7 位のグルコースに結合した p-hydroxybezoyl 基の先にグルコースを結合する配糖化酵素 cDNA を、これまでに獲得した AAGT cDNA 群のアミノ酸配列を基に設計した縮重プライマーを用いた PCR 法によってクローニングし、大腸菌において酵素タンパク質を発現させ、その酵素の特性を明らかにすることを行なう。またその配糖化酵素遺伝子の発現プロファイルについて調べ、AA7GT を含むアントシアニン合成酵素遺伝子の発現プロファイルと比較することを行なう。
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