研究課題
本年度は、3つの課題のうち、「転写因子MpLFYを要とする転写制御ネットワークとその調節下の発生・生理過程の解明」に関する研究を中心に、以下の成果があった。(1)第一世代マイクロアレイを用いた解析からこれまでに得ていた制御標的遺伝子候補について検証を進め、5個の直接制御標的遺伝子候補と8個の間接制御標的遺伝子候補を絞り込むことができた。直接制御標的遺伝子候補のうちの2個については、未公開のゲノム情報からパラログ遺伝子を見いだし、比較解析の対象に加えた。次世代シークエンサーを用いた解析コストの低下、ゼニゴケ・ゲノム解読の進捗状況などを考慮して、第二世代マイクロアレイの有用性はあまりないと考え、その設計は見送ることにした。(2)造精器の発生過程におけるMpLFYの発現に関して、RNA in situハイブリダイゼーションによる解析を完結した。造卵器と胞子体における発現については、GUSレポーターを用いた解析を進めた。(3)造精器における発現量を指標に、RNAiおよび人工miRNA(MpLFY-amiR)による発現抑制株(雄株由来)を確立し、表現型解析をおこなった。精子形成と運動能に欠損がある可能性を見いだし、発現抑制株において精子関連遺伝子2個の発現量低下を確認した。未公開のゼニゴケ・ゲノム情報とヒメツリガネゴケ、クラミドモナスのゲノム情報をもとに、約80個の精子形成・精子機能関連の遺伝子をリスト化した。相同組換えによるノックアウト株を2株(いずれも雄株)得ることができた。(4)SPLファミリー遺伝子が、これまでに得ていた3個に加え、もう1個あることを確認し、その遺伝子(MpSPL4)の遺伝子クローニングを終えた。
2: おおむね順調に進展している
3つの研究課題のうち、MpLFYに関する部分に大きな進展があり、研究の新たな展開が期待できる状況になっているため。
当面、研究の大きな展開が期待されるMpLFYに関する課題を中心に研究を進める。ノックアウト株が取得できたことから、これを用いた解析を優先し、平成24年度内に論文をまとめることを目指す。やや遅れているMADS転写因子とPEBPについては、MpLFYとの関係(前者)と浸透圧ストレスに対する応答・関わり(後者)を中心に研究を進める。
すべて 2012 2011
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件)
Plant Journal
巻: 69 ページ: 116-125
10.1111/j.1365-313X.2011.04776.x
Plant & Cell Physiology
巻: 53 ページ: 287-303
10.1093/pcp/pcs002