研究課題/領域番号 |
23370023
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
相田 光宏 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (90311787)
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キーワード | シロイヌナズナ / 発生 / 生殖 / 進化 / 遺伝子発現 |
研究概要 |
複数の発生過程を調節する転写因子が、なぜ異なる器官ごとに異なる機能を発揮できるのかは不明である。シロイヌナズナの転写因子であるCUP-SHAPED COTYLEDON2 (CUC2)は、葉では鋸歯の形成を、心皮では胚珠の形成を促進する。本研究では、これら二つの器官におけるCUC2の機能特異性の分子メカニズムを明らかにすることを目的としている。平成23年度は以下の成果を得た。 1)機能誘導型CUC2タンパク質(CUC2-GR)を発現する形質転換体を作製した。作製した形質転換体の中から、非誘導時には表現型が現れず、DEX処理による誘導時には葉ではっきりとした表現型(鋸歯の形成の促進)が現れる個体を選抜した。この選抜した系統を用い、さらに花での表現型を効率的に引き起こせるようなDEXの処理条件を検討し、最適化した。これで、CUC2により発現が誘導される遺伝子を網羅的に同定するための基盤となる植物材料が確立できた。一方、CUC2の結合配列をChIPにより同定するためFLAGタグをCUC2のゲノム配列にin frameで結合したコンストラクトを作製した。このコンストラクトをcuc2変異体に導入したところ、表現型を相補することが出来ず、今後の使用に問題があることが分かった。そこで、現在タグをMycに換え、CUC2と融合する場所も変えた別のコンストラクトを作成中である。 2)器官特異的なCUC2機能調節因子を同定するため、CUC2を過剰発現する変異アリルcuc2-1dを変異源処理し、葉の表現型や心皮の表現型を特異的に抑制する変異体のスクリーニングを行っている。 3)CUC2タンパク質の胚発生における標的遺伝子であるLASについて、CUC2がin vitroで結合する配列ことをゲルシフト実験により見いだした。これにより、CUC2タンパク質とDNAとの結合を解析するための技術的な基盤を確立できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
CUC2により発現が誘導される遺伝子の同定、およびChIPによる標的遺伝子の同定では、特に必要な形質転換体の確立が遅れている。一方、CUC2のゲルシフトによる結合実験が確立できたのは、当初の計画以上の進展と言える。
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今後の研究の推進方策 |
CUC2の機能誘導系が確立できた一方、ChIPは技術的な難易度が高いため、今後は機能誘導系を用いた実験系を中心に進めていく予定である。また、cuc2-1dのサプレッサースクリーニングを精力的に進める。ゲルシフトによるCUC2結合配列の同定も併せて行っていく。
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