研究実績の概要 |
酸素発生型光合成電子伝達で機能する2つの光化学系のうち、光化学系Iは14種のサブユニットから構成されるコア複合体(PSI)とアンテナ複合体(LHCI)から構成されるPSI-LHCI超複合体を形成する。緑藻クラミドモナス(Chlamydomonas reinhardtii)のPSI-LHCIは9種のLHCIを結合し、ステート遷移の過程で可逆的にLHCIIを結合する。 本研究では化学架橋法とウェスタン分析法により、 PSI-LHCIにおける9種のLHCIの配置をほぼ決定することに成功した。また、タンパク質を14Cで均一に標識した細胞から単離したLHCIIを結合したPSI-LHCI(PSI-LHCI/II)の各サブユニットを定量した。その結果、CP26、CP29、LhcbM5は合計で約5コピー存在すること、吸収した光エネルギーをPSIへ移動すること、を明らかにした。 次に、光化学系I複合体の分子集合に必須な因子であり、葉緑体にコードされたYcf3とYcf4の役割の解析を行なった。まずN末端にHAタグを融合させたYcf4を過剰発現させることに成功し、HA-Ycf4をアフィニティー精製した。得られた標品のポリペプチド組成を分析したところ、Ycf3と光化学系Iサブユニット(PsaA, PsaB, PsaC, PsaD, PsaE, PsaF)とLHCIサブユニットが検出された。本研究により Ycf4はYcf3と親和性をもつことを初めて明らかにした。また、HA-Ycf4標品に存在した光化学系IとLHCIサブユニットは分子集合中間体に由来すると考えられる。以上の結果から、Ycf3とYcf4は光化学系I複合体の分子集合に関与すると結論することができた。
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