ストリゴラクトンは根圏に分泌され、アーバスキュラー菌根菌との共生に関わるとともに、内生のホルモンとして地上部の枝分かれの抑制等に働く。これまでの研究により、ストリゴラクトンの機能は、植物の栄養獲得・利用戦略と密接に関わっていることが明らかになってきた。本研究では、ストリゴラクトンの枝分かれ抑制作用以外のホルモン機能に関する新たな知見を得ることを目的とした。 昨年度までに、シロイヌナズナのロゼット葉の老化とストリゴラクトンの関係を調べた。その結果、ストリゴラクトン生産量が増加するようなリン欠乏条件下においてロゼット葉の老化が促進されるが、ストリゴラクトン欠損変異体max4においてはリン欠乏依存的な老化の遅延が認められた。本年度は、このmax4の老化遅延の表現型が、合成ストリゴラクトンアナログであるGR5やGR24の投与により相補されることを明らかにした。つまり、シロイヌナズナの古い葉の老化はストリゴラクトン処理により促進された。一方、若い葉においては、ストリゴラクトン処理により緑化の促進(クロロフィル含量の増大)が認められた。以上の結果から、ストリゴラクトンは、古い葉の老化を促進するとともに若い葉の緑化を促すことが示された。また、葉色の解析を行ったところ、ストリゴラクトンは葉色のバリエーションを増加させる傾向にあることが分かった。次に、貧栄養時におけるストリゴラクトン欠損変異体max4の老化遅延の表現型が、最終的に植物の種子収量や種子の質にどのように影響するかを調べた。その結果、種子収量は野生型とmax4で大きな違いは見られなかったが、貧栄養条件下で播種後、max4変異体においては野生型と比較してより多くの芽生えが白化する傾向が認められた。
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