研究概要 |
多細胞生物が継続的に器官成長を行うためには、細胞の増殖と分化のバランスが協調的に制御され、維持される必要がある。植物のメリステムでは幹細胞が未分化性を維持しながら増殖を繰り返す一方で、一部の娘細胞が核内倍加を伴う細胞分化を開始するが、これらの過程を制御する分子メカニズムには未解明の点が多い。我々は最近シロイヌナズナのHIGH PLOIDY1, 2, 3 (HPY1, HPY2, HPY3)の解析から、メリステムで細胞が高い増殖能を維持するためには、タンパク質のユビキチン化、SUMO化、グルタチオン化という3つの翻訳後修飾を介した制御機構が必要であることを発見した。本研究ではこれらの修飾を受ける基質タンパク質を同定、解析し、植物の発生過程で翻訳後修飾によって細胞増殖が制御される分子メカニズムの解明を目指している。これまでにユビキチンE3 ligaseをコードするHPY1に関する研究では、HPY1がメリステムにおいて細胞増殖能を維持するためにターゲットとする基質候補を同定した。またHPY1が細胞増殖だけでなく、細胞成長を伴う細胞分化にも関与することを見出し、分化過程での基質候補を同定した。現在、HPY1によるユビキチン化によってこれらの基質候補の安定性や細胞内局在等が制御されるかどうかを検討している。またSUMO E3 ligaseをコードするHPY2に関する研究では、植物のもうひとつのSUMO E3 ligaseをコードするSIZ1との機能冗長性について解析し、シロイヌナズナの発生段階においては両者が独立の機能を持つ可能性を示し、論文発表を行った。
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