研究課題
平成23年度は光変換タンパク質KillerRedを染色体タンパク質RBMXに連結し、ヒト培養細胞に発現させて、高出力レーザーによるピンポイント機能阻害法の条件検討を実施した。照射ポイントや機能阻害前後の変化を高精度に把握するために、ライブイメージング・データを細胞内時空間情報として活用した。KillerRedの凝集は見られず細胞内で正常に発現した。この利点を利用して、KillerRedによるRBMXタンパク質の時空間特異的機能阻害実験をライブセルイメージングと組み合わせて実施した。その結果、RBMXはクロマチンと相互作用していることを明らかにした。本研究結果を、Cell Press社のCellReports誌に発表した。Matsunaga et al.(2011)RBMX:a regulator for maintenance and centromeric protection of sister chromatid cohesion. Cell Reports, 1, in press.技術的には、蛍光基質で標識した細胞内の微細構造にレーザー光を照射してR0Sを発生させて、タンパク質複合体の構造を破壊することで、細胞分裂の遅延を起こすことに成功した初めての事例となった。高出力レーザーを装着したライブセルイメージングシステムにより、パルス回数、パルス強度などのピンポイント機能阻害の条件設定を、細胞活性のモニタリングと共に実施することで、ピンポイント制御技術を用いた細胞分裂解析手法を開発することができた。また、RBMXを細胞からなくすと、コシーシンは細胞の中にあるにも関わらず、染色体の間に集まらずに細胞内に分散した状態になることがわかった。その結果、2本の染色体はくっつくことができずに、細胞分裂の進行も著しく遅くなり、細胞死を起こすこともライブセルイメージングにて明らかにすることができた。RBMXは菌類から植物・動物まですべての生物に保存されているタンパク質であり、種を超えて生命活動の維持に必須なタンパク質として働いていることがわかった。
1: 当初の計画以上に進展している
ピンポイント機能阻害による細胞内微細構造ダイナミクスの研究として、RBMXのピンポイント機能阻害に成功し、Cell Press社から出版されているCell Reports誌に論文を発表することができたから。
今後はピンポイント機能阻害を植物細胞にも適用できるように研究を推進していく。すでにヒト培養細胞でピンポイント機能阻害法を確立したので、その条件を元に推進していく。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
CELL REPORTS
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