研究課題/領域番号 |
23370030
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究分野 |
形態・構造
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
北野 健 熊本大学, 大学院・自然科学研究科, 准教授 (40336219)
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キーワード | 性決定 / 性分化 / ストレス / 発生・分化 / 発現制御 |
研究概要 |
我々は、ストレスホルモンであるコルチゾルが温度依存的性決定に深く関与することを見出している。しかしながら、ストレスによるコルチゾル合成誘導機構や、コルチゾルによる雄化誘導機構の全貌は明らかとなっていない。そこで本研究では、温度依存性を含めた環境依存的性決定の全貌を明らかにするため、脳(視床下部)でのストレスの受容・応答から生殖腺での性分化(雄化)までの一貫した分子カスケードを解明することを目的とする。今年度は、高水温及びコルチゾルによる雄化において、エストロゲンがどのような役割を果たしているかを明らかにするため、高水温-またはコルチゾル処理により雄化を誘導したメダカ稚魚にエストロゲン(E2)処理を行って表現型解析を行った。その結果、高温ストレスまたはコルチゾル処理したXX個体では、コントロールXX個体に比べて生殖細胞数が有意に減少しているのに対し、これらの処理下でE2を投与したXX個体においては、生殖細胞数の減少が抑制されていた。一方、高温ストレスまたはコルチゾル処理したXX個体では、エストロゲン合成酵素(cyp19a1)や卵母細胞マーカー(42sp50)の発現が抑制され、分泌性増殖因子(gsdf)の発現が誘導されていたが、これら処理下でE2を投与したXX個体においては、これらの発現が回復していた。さらに、メダカ成魚での性比を調べたところ、これら処理下でE2を投与したXX個体においては、完全に雄化が抑制されていることが明らかとなった。これらのことから、高温ストレスまたはコルチゾル処理によるメダカの雄化は、エストロゲン量の減少が原因であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画された実験を順調に実施できており、また興味深い結果も得られているため。
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今後の研究の推進方策 |
今年度、高水温またはコルチゾル処理による雄化は、エストロゲン処理により完全に抑制されること、雄化抑制個体ではエストロゲン合成酵素(cyp19a1)mRNAの発現が回復し、分泌性増殖因子(gsdf)mRNAの発現が抑制されることを見出している。そこで今後は、gsdfを過剰発現したトランスジェニックメダカ系統にエストロゲン処理を行い、cyp19a1及びgsdfの両方の発現を誘導するとどうなるかを解析する。
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