研究課題/領域番号 |
23370031
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高畑 雅一 北海道大学, 大学院・理学研究院, 教授 (10111147)
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キーワード | アメリカウミザリガニ / 鋏脚グリッピング / 光弁別学習 / 無脊椎動物 / 自発行動 / オペラント学習 / 報酬学習系 / 神経生理学実験 |
研究概要 |
アメリカウミザリガニHomarus americanusを用いて、その鋏脚による自発的な挟み行動(グリッピング)を指標とした報酬学習系を利用し、神経生理学的解析を前提とした拘束条件下において、動物の光強度弁別学習能を定量的に調査した。実寸90cm(幅)×45cm(奥行き)×45cm(高さ)の水槽に人工海水を入れ、水温を15±1℃に保持しながら、海水を常時濾過循環させた中に、実験動物を単独で固定した。各個体は、実験開始後はこの水槽内に継続的に固定し、20日間の間に次の7種類の課題を順に提示した。1)前行動形成(2日間)では、明暗交代の条件下に動物を置いて環境に慣れさせた。2)行動形成(1日間)では、明期・暗期いずれでも、レバーを挟む行動を強制的に誘導し、報酬を与えた。3)後行動形成(1日間)では、明暗交代条件下で挟み行動と報酬との連合を消去した。4)2段階明暗識別(4日間)では、明期(40lux)の挟み行動のみを報酬で強化した。5)3段階明度提示(4日間)では、強明期(60lux)、中明期(40lux)、弱明期(20lux)のいずれでも、挟み行動を報酬で強化した。6)3段階明度識別(4日間)では、強明期(60lux)あるいは弱明期(20lux)のみで挟み行動の強化を行なった。7)逆転識別(4日間)では、強明期(60lux)で強化した個体については、弱明期(20lux)のみで、また、弱明期(20lux)で強化した個体は強明期(60lux)のみで、強化を行なった。いずれの課題においても、実験個体は統計的に有意な行動変化を示した。実験には全部で10個体を用いた。この結果は、アメリカウミザリガニが、3種類の明るさを識別した上で、その時の強化条件に合わせて行動を変化させる能力を持つことを実験的に証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経生理学実験に適した拘束条件下で、光弁別学習を行なうことが実験的に証明されたため。次年度以降は、この条件で生理学的な実験手法を適用することで、研究計画目標の着実な達成を目指したい。
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今後の研究の推進方策 |
神経生理学的実験手法を大型甲殼類であるアメリカウミザリガニにただちに適用するのは、技術的に困難であるため、今後は、まず小型の甲殻類であるアメリカザリガニを用いて、神経生理学的手法の適用について検討を進める予定である。
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