研究課題
エサを得るなどの明確な目標をもって行われる行動、すなわち目標指向行動は、同じ動作を繰り返す自動性の運動や、一動作で完結する反射行動に較べ、より高度な運動制御が必要となり、また目標への注意・動機づけといった高次中枢機能も関わるゆえ、その神経生理学的機構の解明は一般に非常に困難である。本研究は、甲殻類の鋏脚によるグリップ行動を対象としてその脳・中枢機構を同定ニューロンレベルで解明することを目的とした。今年度は、グリップ行動のオペラント条件づけを利用して、目標提示に対して実験動物が自発的に惹起するグリップ行動に関わる中枢神経活動を記録解析した。当初はこれまでと同様にHomarus americanusでの記録を試みたが、安定した記録が困難であるため、神経活動記録の容易なProcambarus clarkiiを実験動物として採用した。予備研究でこの種でのグリップ行動条件づけは困難であったが、提示・強化方法や適切な個体選別によって条件づけが可能となった。今年度はProcambarusでグリップ行動のオぺラント条件づけおよび神経活動の細胞外記録・解析を行った。その結果、脳から腹髄を下行する神経活動には、1)グリップ対象の提示時に発火頻度が変化するユニットおよび2)鋏脚の筋活動に先行して発火頻度が変化するユニットが見出された。ただし1)については、条件づけ群とナイーヴ群との間で記録回数に有意差がなく、条件づけ群に特異的なものではなかった。その多くが鋏脚筋活動とも相関を示したことから、鋏脚運動の開始・制御に視覚情報が使われていることが判明した。2)の多くは対象物提示に応答し、かつ鋏脚筋活動との相関も示したため、これらは脳から出力される運動命令を伝達していると考えられる。今回の記録がすべて脳から下行するユニット記録であることから、条件づけ群に特異的な神経活動は脳内で完結している可能性が示唆される。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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