研究概要 |
複眼で発現する3種の視物質遺伝子,opsin-long wave(opLW),opsin-UV(opUV),およびopsin-Blue(opBL)のcDNA全長を取得した。定量的PCRによりそれらのmRNA発現の日周性を検討したところ、いずれの遺伝子も1日を通して一定量発現しており、発現量に周期性は見られなかった。in situ hybridizationにより、それらの発現領域を検討したところ、opLWは複眼背縁部(DRA)を除く全域で、opUVは複眼腹側部を除く全域で、またopBLはDRAと複眼腹側部で発現することを明らかにした。タンパクレベルの発現を検討するため、現在抗体作成を目指して、cDNAからタンパク断片の作成を行っている。また、網膜電図を用いた解析により、波長感度がそれぞれ緑、紫外、青の領域にあることを示した。一方、それぞれの2本鎖RNAを用いたRNA干渉により、各遺伝子のmRNA発現が強く抑制されることを明らかにした。それぞれのノックダウン個体を用いて、6時間位相前進あるいは後退後の明暗周期への概日活動リズムの同調を検討したところ、opLW RNAi処理個体群では約30%の個体で同調が阻害され、同調した個体でも同調に要する移行期が対照群と比べ延長することが分かった。一方、opUV,opBL RNAi処理個体群では、移行期が短縮する傾向が見られた。これらの結果から、複眼で発現するオプシン類は概日時計の光同調に異なる役割を演じており、特にopLWが同調に重要であることが示唆された。予備的ではあるが光パルスによるリセット時にはClock遺伝子の転写が活性化する結果を得た。
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