研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、概日時計の光リセット機構、及び光周時計機構へのオプシンの役割を解析し、以下の結果を得た。 1.フタホシコオロギを用いて、光パルス照射後、1時間間隔で1齢幼虫頭部での各種時計遺伝子のmRNA発現量の変化を検討したところ、主観的夜前半の光パルス照射後にはまずPdp1の転写の上昇が生じ、続いてClockの転写が上昇し、その後periodが上昇すること、主観的夜の後半では、cycleの急激な低下が生ずることが分かった。一方、光同調に主要な役割を演ずるopsin-LW(opLW)をRNAiにより発現抑制したところ、opLW RNAiではこれらの応答は抑制されるとともに、活動リズムの位相変位も強く抑制された。これらの結果から、光による時計の同調の初期反応にClock, cycleの転写レベルの制御が関与することが示唆された。 2.タンボコオロギを用いて、opUV, opBlue, opLWをそれぞれRNAiにより発現抑制した個体での、概日活動リズムの光同調を検討した。opB RNAiでは同調時の位相が約3時間前進するが、明暗周期の位相前進・後退に伴う同調過程そのものはほぼ正常であること、opUV RNAiでは前進時の同調が促進されること、opLW RNAiでは前進後退ともにやや阻害されることが分かった。これらの結果は、概ねフタホシコオロギの結果と類似していた。 3.タンボコオロギ長日反応の光誘導相に誘導効果の高い緑色光または青色光パルス照射後に、頭部から抽出したmRNAを用いて、時計遺伝子の発現レベル、発現リズムの位相を検討したところ、periodの発現レベルが暗期に上昇しやや位相が前進すること、timelessは暗期後半の発現量が増加し位相がやや後退することが分かった。これらの結果から、オプシンによる位相設定が時計遺伝子により異なる可能性が示唆された。
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