研究課題/領域番号 |
23370035
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
坂井 貴臣 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (50322730)
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研究分担者 |
上野 耕平 (財)東京都医学研究機構, 東京都神経科学総合研究所, 主席研究員 (40332556)
朝野 維起 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (40347266)
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キーワード | イメージング / 昆虫 / ショウジョウバエ / 性行動 / 性的受容性 / painless / インスリン分泌細胞 |
研究概要 |
ショウジョウバエメスの性的受容性(オスを受け入れる度合い)の制御にはCa^<2+>透過性TRPチャネル(Pain)が関与しており、脳インスリン分泌細胞(IPCs)で発現しているPain TRPチャネルの発現抑制によりメスの性的受容性が著しく上昇することをこれまでに見出していた。本研究ではIPCsから放出されるどのような物質が性的受容性の制御に関与しているのかを明らかにするため,H23年度にはインスリンシグナルと性的受容性の関係について詳細に調べた。全身,もしくは脳神経系全体でインスリン受容体(InR)のdominant-negatlve(InR^<DN>)を発現させた形質転換バエのメスの性行動を調べたが,いずれも性的受容性に大きな変化は見られなかった。また,インスリン受容体基質をコードするchico遺伝子の変異体を(chico^1)用いてメスの性行動の解析を行った。chico^1ホモ接合体メスの性的受容性は野生型よりも上昇していた。しかしchicolホモ接合体の神経系に正常なchico遺伝子を発現させる遺伝子回復実験を行ったが,性的受容性が野生型レベルに回復しなかった。したがって,インスリンシグナルの抑制によって,性的受容性が上昇するという直接的な証拠は得られなかった。これらの結果から,脳インスリン分泌細胞(IPCs)で発現しているPainチャネルはインスリン以外の情報伝達物質の放出を制御している可能性が考えられる。また,PainがIPCsのCa^<2+>レベルの調節に関与するかを摘出脳イメージングによって検証するため,高速撮影が可能なEMCCDカメラを用いたイメージング解析装置のセットアップを完成させた。現在までに,KCl刺激によるCa^<2+>応答がpain突然変異により低下することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
イメージング解析に関して,イメージング解析用のEMCCDカメラに関しては複数台のデモンストレーションを行い選定に時間がかかったが,KCl刺激によるCa^<2+>応答がpain突然変異により低下することを明らかにできたのでほぼ予定通りの進展であると考えている。一方,行動解析は予定通り行ったが,当初の予想に反し,インスリンシグナルの抑制によって,性的受容性が上昇するという直接的な証拠は得られなかった。
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今後の研究の推進方策 |
H23年度に遂行した研究結果から,インスリンシグナルがメスの性的受容性を制御する証拠が得られなかったため,インスリン分泌細胞で発現する3つのインスリン遺伝子(dilp2,dilp3,dilp5)のRNAiを利用し,それぞれの遺伝子の発現抑制によりメスの性的受容性が上昇するかどうか今後検証する必要がある。また,アセチルコリンおよびGABAの合成酵素が発現する細胞のpain遺伝子の発現を抑制するとメスの性的受容性が上昇することを我々は既に報告しているので,IPCsにおいてアセチルコリンおよびGABAの合成酵素の発現を抑制し,メスの性的受容性が上昇するかどうかも検証する。イメージング解析に関しては当初の予定通り以下の研究を遂行する:(1)蛍光Ca^<2+>プローブであるGCaMPをIPCsに発現させ、摘出脳イメージングにより野生型とpain突然変異体で比較する。刺激としてKCl刺激と電気刺激装置を用いた刺激の2種類を用いる。(2)シナプス開口放出に反応する蛍光プローブ(Synapto-pHluorin)を利用し、IPCsからの分泌物質の放出がpain突然変異により抑制されるかイメージング解析により検証する。
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