研究課題
菌寄生植物は光合成能を失った従属栄養性の植物群で、菌根菌からの炭素源の供給に依存して生育している。一般的な植物には菌根菌の他にエンドファイト菌が共生していて、植物体の防御機構の誘導や根の発達促進など、重要な役割を担っている。菌寄生植物にもエンドファイト菌が存在していることが知られているが、これらの菌類が菌根菌とどのように共存しているのか、従属栄養性の進化の過程で、植物―菌根菌―エンドファイト菌の三者系のダイナミクスがどのように変化しているのかなどについては、これまで全く解析がなされてこなかった。本研究では、独立栄養性から従属栄養性へ進化した複数の植物の系統を対象に、植物―菌根菌―エンドファイト菌の三者系を比較し、この三者系が従属栄養性の進化に与える影響を明らかにすることを目的としている。特に植物の栄養摂取様式の進化に伴って、エンドファイト菌が三者系で果たす役割がどのように変化しているのかに注目して研究を行った。本年度は昨年度に引き続き、独立栄養植物と従属栄養植物を含むラン科、リンドウ科、ツツジ科、ビャクブ科―ホンゴウソウ科の各系統群を材料として用いた。それぞれの植物から抽出したDNA、およびそれぞれの植物から単離したエンドファイト菌のDNAを用いて、MYB72およびNPR1遺伝子の塩基配列を決定した。これらの配列情報をもとに、両遺伝子の定量PCRによる発現解析を実施した。しかし発現量に独立栄養植物と従属栄養植物の間で明瞭な傾向は認められなかった。これまでの結果から,菌寄生植物は近縁の独立栄養植物に比べて単純なエンドファイト菌フロラを持っていること、従属栄養性に至る進化の過程で、菌の種相が単純化し、相対的な現存量が減少する傾向があることが示された。一方、共生に関連する遺伝子の影響は小さいと考えられ、従属栄養性の進化の過程で、三者系の単純化が生じていることが明らかになった。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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American Journal of Plant Sciences
巻: 4 ページ: 524-527
10.4236/ajps.2013.43067
巻: 4 ページ: 859-865
10.4236/ajps.2013.44106v